2019年05月07日

ベネズエラ−手遅れにならないうちに行動を起こそう

以下、5月3日に届いた旧IVAW(反戦イラク帰還兵の会)マット・ハワードさんからのメールの大意です。

ベネズエラ−手遅れにならないうちに行動を起こそう

ここ数週間、めまぐるしい展開だった。帰還兵のリーダーたちは全米を縦横に動き回り、軍産複合体についての研修を実施し、ベネズエラでもくろまれたクーデターへの支持を撤回するよう連邦議会議員に圧力をかけ、歴史上重要なハイランダー・センター(テネシー州にある米国南部労働運動・公民権運動の研究教育センター)で3月末に起きた不審火の被害救援をおこなってきた。

そのような中にあっても、ベネズエラの危機とトランプ政権の相次ぐ悪しき行い−「すべての選択肢がある」とする見えすいた脅しを含めて−はつねにわれわれにとって気がかりだった。

4月30日、野党政治家で自称ベネズエラ大統領のフアン・グアイドはベネズエラ軍指導者に対し、強まるクーデターのもくろみの中にあってマドゥロ大統領の防衛をやめるよう呼びかけた。ベネズエラの危機が引き続き破滅的であって緊急に解決を必要とするものであることは明らかだが、米国によって支持された新たなクーデターはより悲惨な結果をもたらすだけだということもまた明らかである。

だからこそ、われわれはベネズエラに対する制裁(同国における4万人の死につながっている)を解除し、外交を再開し、米国によるいかなる軍事介入の可能性も排除するよう求める呼びかけに加わった。

幸い、連邦議会議員に圧力をかけるために使える選択肢がわれわれにはある。下院法案1004号と上下両院合同決議案11号だ。トランプ政権が「武力によるベネズエラへの敵対行動に及ぶ」のを阻止するために提出された。現時点で決定的に重要なのは、選挙で選ばれた議員らに、われわれはラテンアメリカで同じ歴史を繰り返させないと思い起こさせることだ。

有権者の一人として、連邦議員たちに“今すぐ”伝えてほしい。あなたが、私的な利益のために米国によって引き起こされる新たな戦争を止め、ベネズエラに対する破滅的な制裁を終わらせるために彼らが行動するよう求めているということを。

連邦議会の代表番号202-224-3121に電話し、地元選出議員にコンタクトしてほしい。

みなさんがこの紛争をどう分析しているか分からないが、われわれはベネズエラの人びとには自己決定権があると確信する。いま連帯運動の活動家たちはワシントンにあるベネズエラ大使館を占拠し、グアイド率いる野党が大使館を乗っ取って“正当な”政府であると主張する試みを阻止している。この行動は、ベネズエラでの米国の権力ゲームに終止符を打つ助けになり得るが、好機は限られるだろう。

行動を起こす動きやチャンスが出てきた場合は、すぐにお知らせする。

連帯を込めて、

マット・ハワード
アバウト・フェイス(反戦帰還兵の会、旧IVAW=反戦イラク帰還兵の会)共同代表

(以下、原文)

Take action on Venezuela -- before it's too late

The past couple weeks have been a whirlwind. Our veteran leaders have criss-crossed the country conducting trainings about the Military Industrial Complex, pressuring their congress members to withdraw support from the attempted coup in Venezuela, and providing support to the historic Highlander Center in the wake of the suspicious fire they experienced.

In the midst of all this, the crisis in Venezuela and the Trump administration's continued bad actions -- including the thinly veiled threat of using "all available options" -- remains on our minds.

On Tuesday, opposition politician and self-appointed president of Venezuela Juan Guaido called for Venezeulan military leaders to stop defending President Maduro in an escalation of the attempted coup. While it is clear to us that the crisis in Venezuela continues to be devastating and in dire need of resolution, it is also clear to us that yet another coup supported by the United States will only lead to more disastrous outcomes.

That's why we have joined calls to end the sanctions on Venezuela (recently linked to 40,000 deaths in the country), and to resume diplomacy and foreclose the possibility of any military intervention by the US.

Fortunately there are options available to us to pressure our Congress members: H.R. 1004 and S.J. Res. 11, which were crafted to hold the Trump administration back from "introducing armed hostilities to Venezuela." In this moment, reminding our elected representatives that we won't let history repeat itself in Latin America is vitally important.

Please let them know TODAY that as a constituent, you want them to take action to prevent yet another war waged by the U.S. for private gain and to end the devastating sanctions on Venezuela.

Contact your elected leaders by calling the Congressional Switchboard at 202-224-3121

Regardless of how you break down this conflict, we believe in self-determination for the Venezuelan people. Right now, solidarity activists are occupying the Venezuelan embassy in Washington D.C. to prevent attempts by Guaido's opposition party to take over the building and then claim to be the "legitimate" government. Our action here can help put an end to US power plays in Venezuela, but our window will only grow smaller.

We'll keep you updated as more developments and chances to take action emerge.

In solidarity,

Matt Howard
Co-Director
About Face: Veterans Against the War
(formerly Iraq Veterans Against the War)

(編集部 浅井健治)
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2019年04月26日

アースデイ東京 "One Peace Okinawa"

【アースデイ東京 "One Peace Okinawa"/沖縄の問題を自分のこととして/ジュゴンを救え ハガキ行動も】

 アースデイ東京2019が4月20〜21日、代々木公園をメイン会場に開催された。両日とも好天に恵まれ、家族連れや若者ら多くの人出でにぎわった。
 けやき並木の一角、実行委員団体“One Peace Okinawa”のステージテントでは、「平和なくらしのつくりかた〜沖縄から問われる民主主義〜」と題してトーク&ライブのプログラムが組まれた。「安心・安全に暮らしたい」という当たり前の権利が守られていない沖縄。沖縄のことを誰にも関わる“ジブンゴト”として一緒に考えようと企画された。ゆんたく高江やジュゴン保護キャンペーンセンター(SDCC)、Milk[弥勒]などが共同出展した。

 SDCC代表でもある海勢頭(うみせど)豊さんは「国家のウソによる犠牲。何も変わらない日本の姿が天皇の伊勢神宮参拝に映し出されている。これは正さなければならない」と切り出し、『ああ対馬丸』『喜瀬武原(きせんばる)』『ザンの海』『トラジの花』『はるかな南の島』『月桃』を熱唱。ピースデポ共同代表の湯浅一郎さんは沖縄の軍事化の現状を伝え、「朝鮮半島で始まった平和・非核化の動きを活かし北東アジア非核兵器地帯をめざそう。非軍事・生物多様性・循環をキーワードに国や自治体の政策の検証を」と説いた。
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(海勢頭豊さん)

 宜野湾市の緑ヶ丘保育園父母会メンバーの女性は「部品は米軍のものだが落下はしていない、という米軍のあり得ない言い訳を『はい、そうですか』と受け入れた政府に唖然とした」と憤り、東村高江在住の演奏家、石原岳さんは「沖縄は都合のいい時だけ日本の中に入れられ、都合の悪い時は沖縄の問題だから沖縄で解決しなさい、と。それは違う。沖縄の問題じゃない、日本の問題、みんなの問題のはず」と苦言を呈する。
 第32軍(沖縄守備隊)司令官だった牛島満中将を祖父に持つ元小学校教員、牛島貞満さんは「祖父が南部撤退を命じなければ、多くの住民が犠牲になることはなかった。責任は大きい。軍隊は住民を守らない。沖縄は“皇土”の防波堤にされた」と沖縄戦の歴史をたどった。
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(牛島貞満さん)

 SDCCメンバーは、ジュゴン個体Bの死を無駄にすまいと「OKINAWAじゅごんを救え!大騒ぎキャンペーン」=要請ハガキ運動への協力を呼びかけた。岩屋防衛大臣宛てで、辺野古埋め立て工事の即中止とジュゴンA・Cの生息状況調査・保護を求めている。「私のひと言」を記入する人、複数枚持ち帰る人が相次ぎ、500枚用意していたハガキは初日のうちに品切れとなった。
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(編集部 浅井健治)
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2019年04月11日

山本太郎「れいわ新選組」

山本太郎参院議員が新しい政治団体「れいわ新選組」結成を発表したことをめぐり、レイバーネット日本のメーリングリストに投稿が相次いでいます。投稿順に転載しました(一部省略)。

私の考えは松原明さんや園良太さんらとほぼ同じですが、渡辺和子さんの「切迫した課題があり、天皇制の是非で対立するわけにいかない」という意見も頭から排斥したくはありません。

ちなみに、MDS(民主主義的社会主義運動)の綱領は天皇制の廃止や打倒を呼びかけていません(「日の丸・君が代」強制やナショナリズムの扇動には言及していますが)。象徴天皇制を支持する人、あるいは「今の天皇、安倍より相当マシ」「“令和”、いいんじゃない?」と言う人も、グローバル資本主義の新自由主義諸政策を打ち破り民主主義的社会主義の社会を実現したいと望む限り、MDSに加盟できます。
http://www.mdsweb.jp/form/kouryo.html

しかし、民主主義的社会主義と、あるいはそもそも民主主義と、天皇制ないし象徴天皇制との両立は可能でしょうか。不可能です。私も、およそ民主主義者たろうとする者が象徴天皇制賛美の国民統合キャンペーンに乗せられるようなことがあってはならないと、例えば“令和”使用拒否の運動を提唱したりもしました(アンチ巨人も巨人ファン=“令和”を話題にすること自体が改元政治ショーのお先棒かつぎ、と批判される向きもあるでしょうが)。

一方、その両立不可能な天皇制と民主主義(主権在民)とを並存させているのが日本国憲法です。その憲法を守らせる・生かす運動を大きく深く広げていかなければならないというのが今の最重要の運動課題であることも事実です。そんな観点から「れいわ新選組」の行方を注視することにしましょう。

−ここから−

-----Original Message-----
From: Akira Matsubara
Sent: Wednesday, April 10, 2019 10:44 PM
Subject: [labor-members 53433] 山本太郎氏が新政治団体を発表

以下はフェイスブックに書いたものです。

●名は体を表す〜「れいわ新選組」

 4月10日午後6時、山本太郎氏が「新政治団体」結成を発表するということで急遽、参院議員会館で開かれた記者会見に参加した。ワクワク感があったが、まず名前を聞いてがっくりきた。名は体を表すというではないか。基本政策は、消費税廃止・最賃1500円・奨学金徳政令・公務員を増やす・辺野古中止・原発廃止、など素晴らしい内容。でもなんでこの名前なんだろう? 戦争と支配につながる「元号・天皇制」に芯から反対している私にとっては、受け入れられないものだった。会見の何番目かで私はこの件について質問した。その質疑の部分を動画でYouTubeにアップしたので、ぜひ見て考えてほしい。
・動画(4分半)https://youtu.be/su1dhsArO1s

松原明

-----Original Message-----
From: 柴田武男
Sent: Wednesday, April 10, 2019 11:17 PM
Subject: Re: [labor-members 53433] 山本太郎氏が新政治団体を発表

こんばんは
一言で言えば、どうした山本太郎です。どうかしたようです。大丈夫かな。
柴田武男

-----Original Message-----
From: makiko masako
Sent: Wednesday, April 10, 2019 11:46 PM
Subject: [labor-members 53436] Re: 山本太郎氏が新政治団体を発表

牧子です。山本太郎さんを応援しているだけに、私もがっかりです。松原さんの質問にも、納得のいく答えになっていません。何がアイロニーなのかも分かりません。

これなら「山本太郎と仲間たち」とか「平和党」とか「主権在民党」とか、もっといい名前があるような気がします。それこそ公募してもいいのでは。

元号もお札の肖像画も古くさく陰気なのに、いつも明るく元気な山本さんまでもが「れいわ」とか「新選組」とか復古調なのは残念ですね。せっかくの門出だから祝したい気持ちですが、なんかこの党名を呼ぶのに躊躇します。山本さんを支持することに変わりはありませんが。
以上です。

-----Original Message-----
From:
Sent: Thursday, April 11, 2019 9:36 AM
Subject: [labor-members 53437] Re: 野党は反貧困平和で:山本太郎氏が新政治団体を発表

(情報記載 いしがき)
野党は「反貧困・脱原発・平和」で野党共闘を実現すべきでしょう。

過去の満蒙開拓がしかり、貧困が侵略戦争の口実となります。既に経済的徴兵制は進行しています。

さいたま市 石垣敏夫

以下転載

賃金水準、20年間で日本9%下落、英国87%増、米国76%増、フランス66%増、ドイツ55%増、韓国は2.5倍
賃金水準、世界に劣後 脱せるか「貧者のサイクル」
ニッポンの賃金(上)2019/3/19日本経済新聞(IROHIRA Tetsuro)

-----Original Message-----
From: Akira Yoshida
Sent: Thursday, April 11, 2019 9:38 AM
Subject: RE: [labor-members 53433] 山本太郎氏が新政治団体を発表

仰る通りです。思想性が疑われる名前ですね。新選組なんて「新鮮」ではありません。「社会改革・清浄」とか、今の汚い・危ない・市民の苦しみを乗り越えるネーミングにしてほしいと思います。いっくの会・吉田

-----Original Message-----
From: 渡辺和子
Sent: Thursday, April 11, 2019 10:09 AM
Subject: Re: [labor-members 53433] 山本太郎氏が新政治団体を発表&5月25日15時〜憲法カフェ&バー「天皇制について」

山本太郎氏は、園遊会にて天皇に直訴状を渡され、その始末の反省として、丸坊主刈りにされて皇居に向かって土下座されたと聞いたことがあります。

天皇制について、山本氏と全て一致しないのでは?
一致点で協力しあう以外ありません。

天皇制については、深い論議が必要です。切迫な課題があり、天皇制是非で対立するわけにはいきません。(時々社民共産の現場のご年配の方々が、私の知らない過去の歴史で、対立されているのも、同様な思いです。)

なお天皇制について憲法カフェ&バーで論議しますのでお知らせさせて下さい。

奇数月に1回、土曜か日曜15時〜に、新宿のスペースLEPIA=松原さん名付け親!(命・地球・平和産業協会事務所)にて憲法カフェ&バーを行っています。

参加費1000円ですが、初めて参加者、学生は無料! 経済的困難な方は自由カンパです。

一品注文メニューで、メニュー50円から。ドリンクバイキングやアルコールもあります。

次回は5月25日土曜15時から18時半「天皇制と日本国憲法」を行います。一部は大山勇一弁護士が、丁寧な資料付きでお話と質問、二部は、楽しく和やかに自由ディスカッション!

保守や中道、政治は初めて考えるという人も結構多くいます。10人〜20人ほどの参加者です。30人近くの多数になりましたら場所を変えますので、できる限りご予約をください。以下がお問い合わせ、お申し込み先です。

(社)命・地球・平和産業協会(LEPIA)
TEL 080-4576-9993 FAX 050-1252-3138

ビタミン和子 こと 渡辺和子

-----Original Message-----
From: 渡邊みちお
Sent: Thursday, April 11, 2019 11:55 AM
Subject: [labor-members 53440] 山本新党名について

令和新選組などは普通の感覚では嫌な感じがする!
記者会見での弁明も無理筋が多過ぎる。どうかしちやつているじゃないと感じたのは私だけではないだろう!
勿論、ファンの中には手放しで応援する人も少なくないだろう。
でも選挙はポピュリズムが必要です。思想性が問われていると神学論争を挑む気は起こりません。党名はどうであれ、今まで通り一票は入れるつもりだが、支持者を消極的にする党名の強行は問題である。山本ファンだけの運動でなく、消極的支持者が一回り大きく動ける標識、キャッチコピーが必要なのです。新党名は邪魔な存在なのです。記者会見の内容はとうてい承服できません。再考を求めます。

-----Original Message-----
From: ryota sono
Sent: Thursday, April 11, 2019 3:40 PM
Subject: Re: [labor-members 53433] 山本太郎氏が新政治団体を発表&5月25日15時〜憲法カフェ&バー「天皇制について」

園良太です。
松原さん、大事な質問をありがとうございました。全く同感です。
自分の元号に対する考え方を問われているのに、「どう受け取るかは人それぞれ」と交わす。すり替えであり、「逃げ」です。
日本を覆う天皇賛美と懐古趣味への便乗でしかありません。
「今は細かいことを言わずに大同団結して…」と3.11以降の8年間言い続けて、議論と新しい世界観の模索・提示を避けてきたからこそ、運動は負け続けているのです。

ーここまでー

(編集部 浅井健治)
posted by weeklymds at 18:48| 報道/活動報告

2019年02月22日

米国への公開書簡:ベネズエラに対する内政干渉をやめよ

ベネズエラ危機について日本共産党志位和夫委員長が声明を発表しました。
【弾圧やめ人権と民主主義の回復を】
http://www.jcp.or.jp/web_policy/2019/02/20190221-venezuela.html

外国による干渉とりわけ軍事介入に反対しているのはいいことだと思いますが、それならなぜ米国による石油制裁に触れないのでしょうか。

ベネズエラの経済危機が深刻化した最大の原因は、同国の主要産業である石油産業に対し米国が制裁を強めたことです。日経新聞の以下の記事が詳細に解説しています。
【ベネズエラ、米石油制裁で進む危機 細る外貨獲得】
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO41130900Z00C19A2EA2000/

以下は、少し古いですが、1月24日にノーム・チョムスキーやメディア・ベンジャミン、フィリス・ベニスらが発表した「米国への公開書簡:ベネズエラに対する内政干渉をやめよ」の大意(Google翻訳の助けも借りています)です。

原文は
https://portside.org/2019-01-25/open-letter-united-states-stop-interfering-venezuelas-internal-politics

【米国への公開書簡:ベネズエラに対する内政干渉をやめよ】

[以下の公開書簡は1月24日、ベネズエラにおける米国による介入に反対して、ラテンアメリカ研究者や政治学者、歴史学者そして映画監督や市民運動リーダーその他の専門家70人が署名し発表したものである]

米国政府は、ベネズエラの国内政治への干渉−それは同国政府を転覆させることが目的だ−をやめなければならない。トランプ政権と南北アメリカのその同盟国による行動は、ベネズエラの状況をさらに悪化させ、無用の人的被害と暴力、不安定を招くことはほぼ確実だ。

ベネズエラの政治的両極化は新しいものではない。同国は長い間、人種的および社会経済的な境界線に沿って分断されてきた。しかし近年、両極化はさらに深まっている。これは一つには、選挙以外の方法によるニコラス・マドゥロ政府の排除を狙う野党の戦略に対する米国の支持によるものだ。野党はこの戦略をめぐって割れてきたが、米国の支持は、暴力的な抗議行動や軍事クーデターその他投票によらない手段を通じてマドゥロ政権を打倒しようという強硬派の野党勢力を後押しするものとなっている。

トランプ政権下、ベネズエラ政府に対する攻撃的な言葉遣いは、より過激で脅迫的なレベルにエスカレートした。トランプ政権の高官たちは「軍事行動」を口にし、ベネズエラをキューバ、ニカラグアと並ぶ「暴力のトロイカ」の一環だと非難している。ベネズエラ政府の政策に起因する諸問題は 、OAS(米州機構)および国連の下でも米国の法律やその他の国際協定・条約の下でも違法な米国の経済制裁によって、一層悪化してきた。この制裁は、石油生産の急激な減少をもたらし、経済危機を深め、多くの人びとが命を救う医薬品を手に入れることができないため亡くなる事態を引き起こし、ベネズエラ政府が経済の停滞から脱出することを可能とする手段を断ち切った。一方、米国その他の政府は、米国の制裁によって生じた経済的損害についてさえ、もっぱらベネズエラ政府だけを非難し続けている。

米国とその同盟国は、OASのルイス・アルマグロ事務総長やブラジルの極右ジャイル・ボルソナロ大統領ともども、ベネズエラを窮地に追いやった。フアン・グアイド国会議長をベネズエラ新大統領として承認する−OAS憲章の下では違法とされる−ことにより、トランプ政権はベネズエラの政治危機を加速させ、ベネズエラ軍部を分裂させ国民の分断・両極化を推し進めようと狙った。明白な、時として公言されている目標は、クーデターを通じてマドゥロを追放することである。

ハイパーインフレや物不足、深刻な不況にもかかわらず、ベネズエラは依然として政治的に両極化している国だ。米国とその同盟国は、暴力的で不法な体制転換の推進によって暴力をかきたてることをやめなければならない。トランプ政権とその同盟国がベネズエラで無謀なやり方を追求し続けるなら、間違いなく流血と混沌、不安定という結果が待ち受けている。米国はイラクやシリア、リビアでの体制転換の冒険的試み、そしてラテンアメリカにおける体制転換支援の長く暴力に満ちた歴史から何かを学ぶべきだった。

ベネズエラのどちらの勢力も相手を打ち負かすことはできない。例えば、軍には少なくとも23万5千人の兵士がおり、民兵は少なくとも160万人いる。これらの人びとの多くは、米国主導であることが明らかな介入に直面すればラテンアメリカで広く共有されている国家主権に対する信念に基いて、それだけでなく野党が力ずくで政府を打倒した際の弾圧から自らを守るため、戦うことになるだろう。

そのような状況における唯一の解決策は、話し合いによる解決だ。それはラテンアメリカ諸国で、政治的に両極化した社会が選挙によって不一致を解決できなかったときに採られた。2016年秋にバチカンが主導した、可能性を秘めた努力があったが、体制転換を望むワシントンとその同盟国から支援を受けられなかった。進行中のベネズエラ危機に対し実行可能な解決策があるとすれば、こうした戦略は変わらなければならない。

ベネズエラの人びとと南米地域の利益のために、そして国家主権の原則を守るために、これらの国際主体は内政干渉ではなくベネズエラが政治的経済的危機から脱却することを可能にするベネズエラ政府と反対勢力との間の交渉を支援すべきである。

(以下の署名者の名簿は略)

(編集部 浅井健治)
posted by weeklymds at 18:55| 報道/活動報告

2019年01月25日

プログレッシブ・インターナショナルからの呼びかけ

「サンダース・インスティチュート」と「DiEM25(ヨーロッパ民主主義運動2025)」が2018年11月30日、右派勢力の世界的な台頭に対抗するネットワーク「プログレッシブ・インターナショナル」を結成し、「行動のよびかけ」を発しました。以下はその日本語訳です。ウェブサイトにアップされている2分18秒のビデオの訳も添えました。誤訳・不適訳、ご容赦の上、ご指摘よろしくお願いします。
https://www.progressive-international.org/

【すべての進歩的諸勢力に呼びかける】

労働者に、環境に、民主主義に、まともな暮らしに襲いかかるグローバル戦争が遂行されている。

右翼諸党派のネットワークは、人権をむしばみ、反対意見を抑え込み、不寛容を助長するために、国境を越えて協力し合っている。人類がこうした現存する脅威に直面したことは、1930年代以降なかった。

彼らに打ち勝つには、過去数十年の失敗した体制にただ立ち戻ることはできない。足かせなきグローバリゼーションは平和と繁栄を約束した。しかし、実際にもたらされたのは、金融危機と無用な戦争、破滅的な気候変動だった。

進歩的諸勢力がグローバルな正義をめざして草の根の運動をつくり出すときが来た。世界中の労働者、女性、権利を奪われた人びとを民主主義と繁栄、持続可能性、連帯という共通のビジョンのもとに結集するときである。

プログレッシブ・インターナショナルは、世界のすみずみのコミュニティに手を差し伸べ、私たちの共通のビジョンをともに打ち立てていく。

プログレッシブ・インターナショナルは、不平等と搾取、差別、環境破壊を終わらせるためにこれまでも闘ってきた人びとを支えていく。

プログレッシブ・インターナショナルは、大胆な国際的ニューディール政策の実現に向けてともに活動し、私たちのコミュニティを、街まちを、国ぐにを、地球を取り戻していく。

世界の進歩的諸勢力が団結するときである。

きょう、DiEM25(ヨーロッパ民主主義運動2025)とサンダース・インスティチュートを代表し、私たちは「行動の呼びかけ」を発する。尊厳と平和、繁栄、地球の未来のためにともに闘う諸個人・諸団体のグローバルなネットワークをつくり出すためだ。

ともに行動しよう。プログレッシブ・インターナショナルに結集を。

ヤニス・ヴァルファキス(DiEM25共同代表)
レナタ・アビラ(同運営委員)

ジェーン・サンダース(サンダース・インスティチュート共同代表)
デーヴ・ドリスコル(同事務局長)

【プログレッシブ・インターナショナル/ビデオ】

重大な結果を伴うグローバルな闘いが起きている。危機にさらされているのは、人類の未来にほかならない。あらゆる面で、現状の体制が失敗しつつあるのは明らかだ。

上位1パーセントが今や世界の富の半分を支配する一方、何百万人もの労働者が貧困と不安でがんじがらめにされている。グローバリゼーションは繁栄を約束したが、実際にもたらされたのは金融危機と終わりなき戦争だ。その間にも、地球の気候は破壊へと近づいている。

この危機の中から、グローバルな権威主義が台頭しつつある。そうしたリーダーたちはマイノリティと自由な言論、民主主義そのものを攻撃することで国家の威信を取り戻すことを約束する。しかし、結局は彼ら自身の利益を図っているにすぎない。1930年代の恐るべき再現である。

今日の権威主義リーダーたちはそれぞれに孤立しているのではない。資金提供者や戦略、接点を共有する右翼諸政党のグローバル枢軸の不可欠な一部分である。そして、彼らは世界中で政権を奪取しつつある。

グローバルな平和と繁栄をめざす闘いの共通の戦線を、私たち自身がつくるときが来た。この運動は人びとを世界の左派勢力のもとに結びつけ、私たちがどんな世界に住みたいか、いかにそれを現実のものとするかについて考えをめぐらすだろう。世界中の働く人びとを民主主義と持続可能性、連帯という共通のビジョンのもとに結集していく草の根の運動である。私たちはもはや改良主義をよしとはしない。

私たちは世界のすみずみのコミュニティに手を差し伸べ、ともに力と連帯を築いていく。

どの国にも、進歩をめざして闘う人びとがいる。私たちはともに歩み、強固になった。世界の進歩諸勢力が団結するときだ。きょうから始めよう、よりよい未来の建設をめざして。

(編集部 浅井健治)
posted by weeklymds at 20:09| 報道/活動報告

2019年01月17日

ヨーロッパ民主化のためのマニフェスト

【EUは民主化される。さもなければ崩壊する!/DiEM25(ヨーロッパ民主主義運動2025)/ヨーロッパ民主化のためのマニフェスト/2016年2月】

国際競争力や移民、テロリズムといったさまざまな懸念のうち、ヨーロッパ列強を真に脅かす可能性があるもの−それは民主主義だ!

彼らは民主主義の名において語るが、実際は民主主義を否定し追放し抑圧する。民主主義を体制内化し、忌避し、腐敗させ、欺き、侵害し、操作することにより、民主主義のエネルギーを破壊し、民主主義の可能性を阻もうとしている。ヨーロッパ諸国人民による統治や民衆による政府は、彼らにとって悪夢だからだ。

欧州連合(EU)は、いかにして平和と連帯を何世紀もの長い紛争と偏狭の窮地から救い出せるかを世界に示し、よく知られた「丘の上のかがり火」となることもできたはずだ。悲しいかな今日、共通官僚機構と共通通貨が、言語や文化の違いを超えて一つになり始めていたヨーロッパ諸国人民を分断している。

今日いま、ヨーロッパ人は至るところでEU諸機構によって見捨てられたと感じている。ヘルシンキからリスボンまで、ダブリンからクレタ島まで、ライプチヒからアバディーン(スコットランド)まで。厳しい選択がどんどん近づいている。本物の民主主義か、知らぬ間に進む崩壊か、の選択である。

崩壊しつつあるEUの中心に、罪深い欺瞞が横たわっている−高度に政治的なトップダウンの不透明な政策決定プロセスが、“非政治的”で“技術的”で“手続き的”で“中立的”なものとして提示される。その目的は、ヨーロッパ人が自らのお金やコミュニティー、労働条件、環境に対する民主的なコントロールを行使できないようにすることである。

この欺瞞の代償は民主主義の終焉にとどまらず、分かち合う繁栄の夢でもある:
• ユーロ圏経済は競争力ある緊縮政策の断崖から踏み出し、弱小諸国における恒常的な不況と中心諸国における投資の低迷という結果に陥っている
• ユーロ圏外のEU加盟諸国は疎外され、疑わしい筋に刺激とパートナーを求めている
• かつてない不平等と希望喪失、人間不信がヨーロッパ中に蔓延している

彼らが民主主義を窒息させればさせるほど、彼らの政治的権力は正統性をなくし、経済を停滞させる力は強まり、一層の権威主義に向かう欲求は大きくなる。こうして民主主義の敵は新たなパワーを集め、正統性を失いつつ、希望と繁栄をごく少数の者(社会の他の人びとから自分を守るために、ゲートやフェンスに囲まれてしか希望も繁栄も享受できない者たち)の手に押し込める。

ヨーロッパの危機が人びとを内向きにし、互いに対立させ、以前からある好戦的愛国主義と外国人排斥を増幅させている目に見えぬプロセスがここにある。不安が私的なものとされること、“他者”に対する恐れ、自国第一主義の野心、新たな自国第一主義の政策は、ヨーロッパを苦しめ共通の利益を崩壊させる有害な結果を招く恐れがある。

金融・債務危機に対する、難民危機に対する、一貫した外国人・移民・反テロリズム政策の必要性に対するヨーロッパのみじめな対応はすべて、連帯がその意味を喪失したときに何が起こるかの実例である。

優勢なのは二つの恐るべき選択肢である:
• 国民国家の“繭”の中に引きこもる
• 民主主義なきブリュッセル支配地帯に屈する

もう一つの道がなければならない。そして、それはある!

それはあらゆる権威主義的な考え方に対するヨーロッパの全面的な抵抗につながるもの−民主主義のうねりだ!

エドマンド・バーク(18世紀イギリスの政治思想家)の言葉は今日のヨーロッパに完全にあてはまる:「悪が勝利するために必要なことはただ一つ、善人が何もしないことである」。民主主義のために献身しようとする人びとはヨーロッパ全域で行動することを決意しなければならない。そのようなうねりを呼び起こす目的で、私たちは2016年2月9日、ベルリンに集い、DiEM25運動を創設した。

私たちはヨーロッパ各地から集まり、異なる文化と言語、なまり、所属政党、イデオロギー、皮膚の色、ジェンダー自己認識、信仰、良き社会の見方によって結ばれている。

私たちは、民主主義をひどく蔑んでいる愚かなEU支配層が真に民主的なヨーロッパ連合を不可能にしてしまうのを阻止しようと固く決意するヨーロッパ人として一つになる。

シンプルでラディカルな一つの考えがDiEM25の原動力となっている:
ヨーロッパを民主化しよう!
EUは民主化されるか、さもなければ崩壊する!

最優先課題は(A)政策決定の完全な透明性(例えば、欧州理事会や経済・財務相理事会、ユーロ圏財務相会合のライブ中継、貿易交渉文書の全面公開、欧州中央銀行議事録の公表など)、(B)債務・金融・不適切投資・貧困拡大・移民といった危機に真に取り組む革新的な諸政策を追求し、既存のEU諸機構を緊急に再編成すること−である。

ヨーロッパのさまざまな危機が安定化した後の中期的な目標は、「憲法制定議会」を招集することである。そこでは、いかにして2025年までに、各国の自己決定権を尊重する最高決定機関たる議会を持ち、各国議会・地方議会・市町村議会と権限を分担する本格的なヨーロッパ民主主義をつくり出すかについて、ヨーロッパの人びとが議論を交わす。

速やかに私たちに加わって、DiEM25をつくり上げ、欧州連合を民主化するためにともに闘うことをヨーロッパの仲間たちに呼びかける。あらゆる政治的関係を単なる技術的判断のように装う権力関係へとおとしめることは終わりにしよう。EUの官僚機構を、主権を有するヨーロッパ諸国人民の意思に従わせよう。市民の意思に立ちはだかる企業権力の常習性支配を撤廃しよう。単一市場と共通通貨の運営ルールを政治によって規制しよう。

私たちは、包括的な透明性と本物の連帯、真の民主主義によって可能となる「理性、自由、寛容、創意のヨーロッパ」に触発されている。私たちがめざすのは:
• すべての権力が主権を有するヨーロッパ諸国人民に由来する民主主義ヨーロッパ
• すべての政策決定が市民による監視のもとに行われる透明性あるヨーロッパ
• 市民が国外においても国内においても同等に扱われる統一したヨーロッパ
• 未達成であってもラディカルな民主的諸改革を自らの仕事とする現実主義のヨーロッパ
• 中央政府の権力を、地方の民主主義を最大限強化するために使う分権化されたヨーロッパ
• 異なる地方、民族、信仰、国家、言語、文化からなる多元的なヨーロッパ
• 違いを大切にし、あらゆる形の差別を終わらせる平等なヨーロッパ
• 人びとの文化的多様性を生かす、文化のあるヨーロッパ
• 真の解放の前提として搾取からの自由を認める社会的なヨーロッパ
• 環境にやさしい分かち合いの繁栄に投資を振り向ける生産性のあるヨーロッパ
• 地球の富の範囲内で暮らす持続可能なヨーロッパ
• 真に世界規模でグリーンな社会への移行に取り組むエコロジーのヨーロッパ
• 市民の創意の革新的な力を解き放つ創造性あるヨーロッパ
• 連帯を支える新たなテクノロジーを推進するテクノロジーのヨーロッパ
• 過去から逃げることなく明るい未来を探し求める歴史志向のヨーロッパ
• 非ヨーロッパ人を同じ市民として処遇する国際主義のヨーロッパ
• 近隣また遠隔地における緊張を緩和する平和のヨーロッパ
• 世界中のさまざま考え方、人びと、創造力に感受性を働かせ、フェンスや国境を弱さの兆候、不安定の源とみなす開かれたヨーロッパ
• 特権や偏見、欠乏、暴力の脅威が消え失せ、ヨーロッパ人が生まれつきステレオタイプな役回りを負わず、潜在能力を発展させるチャンスを享受し、自由に生活や仕事、社会で多くのパートナーを選ぶことができる解放されたヨーロッパ
−である。

DiEM25を摘みとれ
diem25.org

*原文は
https://diem25.org/wp-content/uploads/2016/02/diem25_english_short.pdf

(編集部 浅井健治)
posted by weeklymds at 21:11| 報道/活動報告

2019年01月11日

新日鉄住金は1997年和解の精神に立ち帰れ

韓国大法院の元徴用工判決をめぐるマスメディアの報道に全く欠落していることがあります。1997年、新日鉄(現・新日鉄住金)が釜石製鉄所で働かされていた韓国人徴用工の遺族との間で、金銭支払いや慰霊事業への協力を含む内容の和解によって問題を解決したことです。

新日鉄住金はこの和解の精神に立ち返り、日本政府の指示に従うことなく自らの判断で、速やかに被害者への賠償を行わなくてはなりません。

以下は、和解について報じた「統一の旗」(現・週刊MDS)の記事です。

【画期的な勝利和解/日本製鉄元徴用工裁判/強制連行企業で初の金銭支払い/“日韓協定で決着”論に風穴/1997年10月3日 統一の旗第511号】
〈リード〉
 九月十八日、日本製鉄元徴用工裁判が新日鉄との間で和解解決した。和解内容は新日鉄による慰霊祭の実施や合計二千五万円の支払いなど。強制連行企業が被害者に金銭を払ったのは初めてで、時効などをたてに補償を拒む企業の論理を打ち破り、「日韓協定で解決済み」論に大きな風穴を開ける画期的な勝利和解だ。国相手の裁判は今後も継続する。
〈リード終わり〉

◎各原告に200万円 新日鉄

 和解成立を受けて九月二十二日、弁護団と支援する会が記者会見した。
 まず、長谷川弁護士が声明を読み上げた(別掲)。ついで、支援する会山本事務局長が談話を発表。ドイツの例と比較しながら、和解内容は金額の上でも被害者個人に支払ったという点からも国際的に高い水準であることを強調した。日鉄の強制連行について初めて研究し闘いのきっかけを作った支援する会古庄代表も「感無量だ」と感想を述べた(要旨別掲)。
 今回、新日鉄が金銭を支払ったのは、強制連行・強制労働の末に米軍の艦砲射撃で亡くなった原告の肉親の慰霊事業への協力とされている。新日鉄は「日鉄とは別会社」との理由で戦後処理の責任を回避し続けることはできなかったのである。しかも、遺族に対して支払ったことは、「時効」が補償を拒む理由にはならないことを証明している。今回の和解は「日韓協定で解決済み」という補償拒否の論理を突き崩し、他の戦後補償裁判を大きく励ますものである。
 このような和解を引き出した力は支援する会が作り上げてきた大衆的な裁判支援の運動だ。五万人を超える公正判決署名、東京総行動での新日鉄攻め、社長宅への要請はがきなどの行動が、社会的批判の広がりを恐れる新日鉄を追い込んできた。九月十一日に予定されていた全国総行動を前に新日鉄が「行動は中止してほしい」として和解案を示してきた事実にもそのことは明らかだ。
 最終交渉のため来日した原告代表六人は、十七日に釜石製鉄所内で行なわれた新日鉄主催の合祀祭に参加し、「厳粛な合祀祭で感激した」「父のことを思って涙が止まらなかった」と語っている。十八日の和解成立後は弁護団や支援する会会員と懇談。国との訴訟をあくまで闘い抜く決意を共に固めあった。

【和解内容】
 新日鉄は以下の慰霊の協力を行う。
@遺骨未返還の原告十名に一人当たり二百万円を、遺骨を受け取った原告一名に五万円を支払う。
A釜石製鉄所内の鎮魂社に原告の親族を含む韓国人被害者二十五名全員の犠牲者名簿を奉納し、合祀祭を会社の費用負担で行なう。
B韓国における慰霊に関わる費用の一部として一千万ウォン(約百四十万円)を負担する。

【声明/日本製鉄元徴用工裁判弁護団 日本製鉄元徴用工裁判を支援する会】
 我々は、今回の新日鉄の対応を英断として高く評価する。
 現在でも日本政府は、韓国に対する補償問題は一九六五年の日韓条約・日韓請求権協定と国内法で解決済みとする不当な主張を繰り返し、一方日本企業もこれに追随して「日韓協定と国内法で解決済み」「すでに時効」であるなどと主張し、韓国の戦争被害者の補償要求をことごとく拒否する理不尽な態度に終始している。こうしたなかで、日本のトップ企業の一つである新日鉄が、韓国の戦争被害者に対して直接金銭を支払いかつ慰霊事業への協力を行った。この事実は、戦時中の強制連行・強制労働の戦後処理の責任を承継法人である新日鉄が人道的立場から認めたものであり、実質的に「日韓協定による解決済み論」に大きな風穴をあけた意義があると考える。
 また、支払われた金額も一九八八年に議員立法で成立した「台湾住民である戦没者の遺族等に対する弔慰金等に関する法律」に基づき、台湾住民で戦死した軍人や軍属の遺族、台湾住民で戦争中に著しい障害を受けた軍人や軍属またはその遺族に、弔慰金または見舞金として支払われた一人二百万円と同程度のものであり、十分評価できる金額である。
 これによって、遺骨返還、未払金返還等を求めた裁判は新日鉄との間では解決したが、日本政府とは引き続き裁判が継続する。日本政府の朝鮮人強制連行・強制労働、そして賃金等の未払いと不当な供託、犠牲者の遺骨未返還の責任は重い。我々は一層の原告団との団結を固め、法廷での実質審理を強めるとともに、他の強制連行・強制労働裁判の原告・支援団体とともにILOに提訴し、国内外の世論に訴え、日本政府を包囲し、原告の要求を実現する決意である。
 そして、今回の新日鉄との解決がすべての戦後補償実現につながるよう、韓国・中国をはじめアジア各地から日本政府や企業に対して戦後補償を求めているすべての被害者および支援団体との連帯を強化し、引き続き奮闘するものである。

【和解の成果に感無量/支援する会代表・古庄正駒沢大学教授】
 私が日本製鉄の強制連行について初めて論文を書いたのは八六年の一月。その研究が今日、こういう形で実を結んだ。感無量なものがある。
 この訴訟は、戦後補償要求に対する企業や国の対応を深く問うものだ。戦争直後、現地企業と朝鮮人連盟が補償金額まで合意していたのを厚生省や企業本社が圧力をかけてつぶした。そして未払い金問題の解決策として「供託」の利用を編み出し今日まで維持している。
 強制労働の具体的資料はあるので論理的には勝てるだろうが、具体的に勝つことは無理かと思っていた。それが日本国内はもちろん、世界的にも決して少なくない額で妥結した。戦後補償裁判が膠着して動かない中でこうした回答を引き出した意義は大きい。

【勝利を喜ぶ原告たち】
◎国との訴訟も頑張る
◆洪湧善(ホン・ヨンソン)さん
 弁護団をはじめとする支援の皆さんのこれまでのご協力に感謝する。今後は日本国を相手にした裁判が残っている。これからも頑張っていきたい。

◎二百万が二億にも感じる
◆趙英植(チョ・ヨンシク)さん
 これが最善の解決とは思わない。しかし支援してくれた皆さんのことを思うと、受け取った二百万が二千万にも二億円にも感じる。
 この結果は韓国の次の世代にも伝えていけるものだ。戦後補償を求める運動を積み重ねることで日本も少しづつ変わっていくだろう。

◎これで魂を韓国に戻せる
◆李相九(イ・サング)さん
 金額について不満はあるが、新日鉄が事実を認めたこと、慰霊祭を行なうということは救いだ。ようやく韓国に魂を戻して慰霊を行なうことができる。
 原告だけの力ではとうていここまで来ることはできなかった。強制連行の第一の責任は日本政府にある。引き続き支援をお願いしたい。

◎支援のおかげで闘えた
◆李康仙(イ・カンソン)さん
 皆さんのおかげで確信を持って今日まで闘ってこれた。自分の父たちが戦争中に行なったことは間違いだと言い切って支援の闘いを進めてきた皆さんに敬意を表したい。
 韓日協定には多くの問題があり、今後も正していかねばならない。

(浅井健治)
posted by weeklymds at 16:03| 報道/活動報告

2018年11月21日

日産村山工場閉鎖−カルロス・ゴーンの最初の仕事

【「市がからっぽになっちゃう」 工場閉鎖で破壊される地域/ルポ 日産が撤退する街 東京都武蔵村山市/1999年12月31日『週刊MDS』(当時は『統一の旗』)第622号】

<リード>
 五工場の閉鎖、二万一千人削減、取引先メーカーの半減−−。日産自動車が空前の大リストラ計画「リバイバル・プラン」を発表して二か月がたつ。日本を代表する巨大企業の荒療治は、地域にどんな波紋を投げかけているのか。師走の一日、閉鎖対象とされた村山工場のある東京・武蔵村山市を歩いた。(A)
<リードおわり>

 新宿から中央線で三十分、立川でバスに乗り換えてさらに二十分。東京ドームの四十倍の広さという日産村山工場の正門に着いた。

◎客足落ちる飲食店

 工場前の通り沿いにある中華料理店をのぞく。店主は開口一番、「ゴーンさんが発表してからさっぱり」。フランス・ルノー社から日産に送り込まれたカルロス・ゴーン最高執行責任者が大リストラを打ち出したのは、十月十八日のこと。以来、目に見えて客足が落ちているという。
 「前は昼は行列が並んで、待ち切れずに帰る人がいた。夕方になると晩酌用にギョウザのおみやげを買ってくお客も多かった。今は全然」。店主はこの八月、自宅を買ったばかり。ローンがまるまる残っている。「日産の他にも常連さんがいるので何とかやってくしかない」
 何軒か先の酒屋の主人は、“造れば売れた”時代の日産を懐かしんだ。「季節工が三千人からいて、それはすごかった。スカイラインGT−Rがヒットして、二十四時間体制のフル稼働。夏祭りなんていうと、ビールの注文がどっと来た」。日産の業績が低迷し始めると、まず修理の業者がいなくなった。季節工の住んでいたアパートは建設労働者の宿舎に変わり、一部は空き家になっている。

◎「時代が時代だから」

 村山工場が完成したのは一九六二年。当時の『町報』には「プリンス自動車工業誘致に成功!」の見出しで、「本事業は村山町有史以来の大事業。将来永遠に記念されるべき」とある。用地の提供など町民あげて協力し、農業と織物業しかなかった町の産業に“希望の星”が生まれた。
 四年後にプリンスが日産と合併、増産体制は続いた。八〇年代には、東京都市町村部の工業製品出荷額の一割以上が武蔵村山市内で生産されるまでに至る。市の発展と村山工場の活況は軌を一にしていた。その日産が今、街を見捨てようとしている。「閉鎖はまさに青天のへきれき」。市議会議長が日産社長にあてた要請書の言葉が、地元の受けた衝撃の大きさを物語る。
 工場の西隣に日産の家族アパートがある。五棟二百五十世帯が暮らす。ゴミ置き場の掃除をしていた女性と話ができた。座間工場で働いていた夫は同工場の閉鎖(九五年)後、村山に単身赴任。家族は二年前ここに越してきたばかり。「時代が時代だから、どこでも働く場さえあれば。主人の行くところについていくしかありません」と言葉少なだ。村山工場の労働者三千人は二〇〇一年三月までに追浜(神奈川県横須賀市)・栃木両工場に配転となる。応じられなければ辞めるしかない。村山に残れるのはメッキ部門など三百人にすぎない。

◎子どもたちにも影響

 男の子の手をひいた若い母親に聞く。夫の働くフォークリフト部は閉鎖の発表よりも前に売却が決まっていたという。「でも、どこへ行くのか分からない。全然話がないそうです」。子どもは来春小学校に入学する。「うちは卒園したからいいけど、これから幼稚園に入れる家は大変。入園金を払って転勤になれば、また新しいところで払わなくちゃならないし」
 市内北部にあるその「村山いずみ幼稚園」に足を伸ばしてみた。園長の話では、数年前までは園児三百六十人中三十人以上が日産社員の子どもたち、三台の送迎バスのうち一台は日産社宅専用だった。「転勤で退園なさる方が続いて現在は四人。来年の募集で日産からは一人だけでした。私立なので園児が集まらないことには運営できません。少子化に追い打ちがかかり、非常に打撃です。バスを今までより遠くに走らせて園児を集めなければ」と困惑顔だ。
 武蔵村山市は都内二十七市の中でただ一つ、鉄道が通わない街。「市のシンボルだった日産がいなくなれば、悲願の駅の実現がまた遠くなる」と心配する青果店の店主がいた。「お客の半分が日産と出入りの業者の車。ここも閉鎖するしかない」(ガソリンスタンド)「今は影響ないが、問題はこれから。市が空っぽになっちゃうんだから」(コンビニ)。日産撤退への不安は高まるばかりだ。
 問われるのは労働組合の取り組みだろう。工場正門近くの日産自動車労組村山支部に足を向けた。しかし、「すべて本部で対応してますので」とすげない。リストラを「構造改革は避けられない」と是認する労使一体路線に何も期待はできない。

◎ラインを残せ

 もう一つ、JMIU(全日本金属情報機器労組)日産自動車支部がある。村山工場の組合員は今わずか二十七人だが、全金プリンス支部の時代から、日産との合併を契機にした会社・組合一体の組織破壊・暴力支配と闘い続けてきた。書記長補佐の小山盛義さんが応対してくれた。
 職場では、一回目の個人面談が行われている。「栃木や追浜だと絶対に通えない人がいる。村山工場に生産ラインを残せというのが私たちの要求」。その要求に職制層も含めて共感が高まりつつある。車で出勤する人たちが窓を開けてビラを受け取るようになった。「ただ、まだ全体が立ち上がるまでには至っていない。地域の団体への働きかけもこれから」。小山さんは今後の闘いに決意を燃やす。
 工場の南に「立川工業会」の案内板が掲げられた一画がある。古びた鉄工所で声をかけると、「日産はうちみたいな小さい下請けは相手にしないよ」。村山工場の一次下請けは全国百二十四社を数えるが、地元の業者は少ない。鉄工所の突き放したような答えから、日産による下請け選別支配の構造が浮かび上がる。
 夫婦二人だけのクリーニング店の店主は語る。「この商売は資金をつぎ込む商売じゃない。信用が第一。生活と密着して、長年かけてお客をつかんできた。人がいて初めて成り立つ商売さ。それだけに(閉鎖は)ひびく」。人々の暮らしと仕事の成り立ちを引き裂き、“わが亡きあとに洪水は来たれ”とばかりに大リストラに突っ走る日産。その暴走をくい止める地域のつながりが生まれてほしい。そんな思いを胸に、日の傾きかけた武蔵村山の街を後にした。
posted by weeklymds at 16:55| 報道/活動報告

2018年06月26日

「東アジアは平和への一歩を大きく踏み出した」 無償化裁判を闘う朝鮮高校生・父母は語る

東京朝鮮高校の生徒たち(当時)が原告となった「高校無償化」裁判。東京高裁での控訴審がきょう6月26日の第2回口頭弁論で結審しました。判決は10月30日(火)16時です。弁護団は「結果は安易に予想できないが、一審判決の行間から滲んでいたような偏見に満ちた判決の書き方はしないだろう」と見通しを語っています。

衆院第1議員会館で行われた報告集会での在校生代表の女子生徒(舞踊部キャプテンだそうです)とオモニ会会長の発言を紹介します。

◎在校生代表

2017年9月13日、忘れはしないその日から9か月という月日が経ちました。高3先輩がたの後ろ姿を見ながらこの闘いに臨んできた立場から、とうとう私たちが学校の顔である高校3年生としてこの場に立っています。

2018年が始まり、祖国の情勢がめまぐるしく動き、4月27日には全校生徒が体育館に集い、歴史的な北南首脳会談の瞬間をともに喜び合いました。祖国統一をただただ夢見ていた私たちも、実現されようとしていく今、驚きとうれしさで胸がいっぱいです。また、平昌オリンピックや朝米首脳会談といった、世界が平和への一歩を大き踏み出している今、私は朝鮮民族の一員であることをとても誇りに思います。

しかし、日本政府による民族教育への弾圧は何一つ変わることがありません。歴史を見直さず、当たり前にあるべき権利が与えられず、勝ちとるために闘うこの活動が私たちにとっては当たり前となっています。そんな中、私たち高3は2日後には修学旅行で祖国に旅立ちます。朝鮮半島をとりまく情勢が好転し、激動する時期に行くことになります。祖国とは何か、自分自身とどうとらえ合わせていくのか、同級生とともにこれまでの人生を深めていくとても貴重な期間を過ごすことになります。

 そんな私たちは日本で暮らす在日朝鮮人として、朝高生として何ができるのか。それは、たとえ日本で生まれ育っても朝鮮人としてのアイデンティティを持ち、ウリハッキョ(私たちの学校)、同胞社会を守り続けていくことだと思います。そのためにも、高校無償化の権利を必ずつかみとらなくてはならないと強く感じます。弁護士の方がたや日本の支援者、そしてオモニ会や卒業生のみなさんは私たちの権利のためにたくさんの力を注いでくださっています。だからこそ、私は明るく胸を張り、そして希望を与えられるような姿を見せたいと思っています。そして、私は朝高生が街中でチョゴリを何の抵抗もなく堂々と着ることができる未来をつくり上げたいです。

きょうは、そんな明るい未来を私たちがすべて担っていこうという気持ちをこめて歌を準備しました。高校3年生全員で歌います−『民族教育の誇り高く』。

◎オモニ会会長

日本政府が高校無償化制度から朝鮮学校だけを排除して9年目。62人の生徒が原告となった裁判からもうすでに4年4か月の月日が経ちました。このかんにどれだけの生徒が自分たちの代で無償化闘争を終えられず、この重い荷物を後輩に託さなければならないのかと悔しい涙を流しながら卒業していったことでしょう。

晴れやかであるべきはずの日に、そんな思いを胸に、わが息子もこの春卒業しました。そして今もなお、勉学に励み友人たちとともに過ごす、未来への夢を育むべき貴重な時に、街頭へ出て、朝鮮学校に対する高校無償化除外の不当性を訴え続けなければならないのです。入学式早々、校長先生は新入生を前にして「これからは君たちも一緒に闘わなければなりません」と言わざるを得ないこの現状はあまりにも残酷で、胸が痛みます。

私たちは、すべての子どもたちに学ぶ権利を、とうたった就学支援金制度からなぜ朝鮮学校だけが外されなくてはならないのか、ただ当たり前の権利を保障してほしいと訴えているだけにすぎません。朝鮮学校に学ぶ子どもたちは、日本で生まれ、日本で育っていく三世・四世・五世たちです。

先日、韓国の「ウリハッキョと子どもたちを守る市民の会」のみなさんが来日されて、文科省の要請に行った時、一緒に参加した高校2年生の男子生徒は「ぼくは日本のことが好きですし、日本のいいところをたくさん知っています。そんな自分たちの好きな国で差別されることはすごく悲しい。無償化問題も良心を持って取り組んでほしい」と話しました。文科省の役人の胸にはどのように響いたことでしょうか。「係争中なので発言は控えます」と返す役人に声を大にして言いたい。「あなたたちに子どもはいないのか」「人間味ある感情はあるのか」と。

9月13日のあの不当判決。どれだけの多くの人が強い怒りを覚え、深い悲しみに包まれたことでしょう。国を相手に闘うことの難しさを痛感しました。しかし、落胆ばかりはしていられません。報告集会は決起集会へ変わり、10月の全国集会、2月の再決起集会はわれわれがより一層連帯して逆転勝利をめざして最後まであきらめず、闘いぬくことを決意する場となりました。

原告となった生徒たちはとっくに朝鮮高校を卒業し、その父母たちもほとんどがいなくなった今、在校生とその保護者が当事者として向き合い、民族教育の正当性とそれを受ける権利があることを世論に訴えていきます。

いかなる理由でも、どんな国籍であろうとも、子どもたちは守られるべき存在です。これからも、明るい未来のためにオモニたちは団結してひるむことなく闘い続けます。

われわれ在日朝鮮人はつねに差別を伴いながら進んできたし、その差別から民族教育を守り育んできた歴史があります。こんなことで負けたりはしません。最後はともに闘ったすべての人と笑顔で抱き合える日までがんばりましょう。

昨今、北南首脳会談に続き、朝米首脳の歴史的、まさに世紀の会談が行われ、東アジアに平和が訪れようとしています。同じ船に乗り遅れた日本ですが、私は日朝関係の改善を心から願っています。日本政府は、朝日首脳会談を本気で望むのならば、まずは朝鮮学校に対する裁判をすべて和解し、高校無償化の適用と就学支援金の遡及適用、そして自治体に対する補助金見直し通達の撤回と、国家や政府による民族差別をやめさせ、朝鮮学校生徒たちの学ぶ権利を保障するよう強く強く求めます。

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『民族教育の誇り高く』を全員で歌う東京朝鮮高校3年の生徒たち
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2018年04月04日

地べたの「階級」、研究室の「階級」

 日本では死語と化した「階級」をタイトルに組み込み、昨年10月と今年1月、相次いで刊行されたブレイディみかこ著『労働者階級の反乱−地べたから見た英国EU離脱』(光文社新書)と橋本健二著『新・日本の階級社会』(講談社現代新書)。読み比べてみた。(以下「ブレイディ」「橋本」『反乱』『新・日本』と略記)

 ところで、「階級」とは何だろう。50年近く前、学生運動に足を踏み入れたころ私が教えられたのは、例えば『経済学辞典』(1965年9月初版、岩波書店)の次のような定義だ。

ーー階級とは、社会の生産体制における人々の生産手段に対する所有関係を通して、生産上占めるそれぞれの地位の相違によって区別される人間集団をいう。…階級は政治的・社会的な体制における人々の地位ではなく、経済制度あるいは生産の社会的体制における地位をさす。生産手段を私有独占するものは、社会の他の部分の労働を占有・搾取することができる。この搾取・被搾取の関係は、まったく生産手段に対する所有・非所有の関係から発生する…(p.52)ーー

 これを、『新・日本』の「階級とは、収入や生活程度、そして生活の仕方や意識などの違いによって分け隔てられた、いくつかの種類の人々の集まりのことをいう」(p.11)とする定義と比べると、後者の方が意味するところが広範囲で厳密性に欠ける。『新・日本』もp.57以下で、資本主義社会の階級が生産手段に対する所有・非所有の違いから生まれていること、そこにおける搾取のからくりについて説明してはいる。が、全体の叙述は、生産手段との関係の違いよりは「収入」「生活程度」「生活の仕方」「意識」の違いに力点がおかれ、『経済学辞典』の定義が脳に染み込んでいる私としては物足りなさが残った。

 とはいえ、『新・日本』が「…激増している非正規労働者は、雇用が不安定で、賃金も正規労働者には遠く及ばない。…労働者階級が資本主義社会の最下層の階級だったとするならば、非正規労働者は『階級以下』の存在、つまり『アンダークラス』と呼ぶのがふさわしいだろう」(p.77)「正規労働者とアンダークラスは、本来は別々の階級というより、労働者階級の内部の異なる二つのグループである。しかし両者の異質性はあまりに大きく、もはやアンダークラスは階級に準ずる存在になっている…」(p.78注)とし、今日の日本には「格差社会」というような生ぬるい言葉では表し尽くせない「新しい階級社会」が出現したと述べている点は全面的に賛成だ。

 2010年、労働者派遣法撤廃を求める厚生労働省要請行動を取材した際、応対する担当官の所属部署の名を見てびっくり仰天した記憶がある。それは「需給調整事業課」という。派遣労働者は、足りなくなればどこからか調達し、余れば即座に廃棄する「需給調整」の対象でしかない。私は群馬県嬬恋(つまごい)村のキャベツを思い出した。取れすぎて余まったらトラクターで踏みつぶす。それと同じように「需給調整」され、「雇用の調整弁」にされているのが、非正規労働者だ。労働者をいつでも廃棄できるモノ扱いする。「階級社会」でもまだ生ぬるい。正規労働者の一段下に雇用不安定・差別待遇・低労働条件・無権利の労働者を置く「現代の身分社会」だ。実際、交際する女性の親から「正社員でない者に嫁にやれない」と言われて結婚が破談になった例もあると聞いた。「身分差別」以外の何ものでもない。(このパラグラフには週刊MDSバックナンバーからの引用が含まれています)

 『新・日本』はこうしたアンダークラスの人びとの苦しみに寄り添いながら、その苦しみが固定化し、貧困が世代を超えて連鎖していく危険性に警鐘を鳴らす。次のような記述がある。

−−…長時間営業の外食産業やコンビニエンスストア、安価で良質の日用品が手に入るディスカウントショップ、いつでも欲しいものが自宅まで届けられる流通機構、いつも美しく快適なオフィスビルやショッピングモールなど、現代社会の利便性、快適さの多くが、アンダークラスの低賃金労働によって可能になっている。しかし彼ら・彼女らは、健康状態に不安があり、とくに精神的な問題を抱えやすく、将来の見通しもない。しかもソーシャル・キャピタルの蓄積が乏しく、無防備な状態に置かれている。…決定的な格差の下で、苦しみ続けているのがアンダークラスである。この事実は、重く受け止める必要がある。(pp.113-114)ーー

 大いに共感を覚える。けれども残念なのは、彼ら・彼女らの苦しみが彼ら・彼女らの肉声として伝わってこないことだ。著者・橋本は膨大な調査データの詳細な分析を通して、それぞれの階級に属する人びとの人物像を提示する。第5章「女たちの階級社会」では、女性を本人の所属階級、夫の有無と所属階級の組み合わせによって17のグループに分類し、グループごとの生活満足度や性役割分業意識などの違いを考察する。しかし、それはあくまで“類型”化の試み、調査票の集計数をもとに橋本が描いた“スケッチ”にすぎない。

 一方、『反乱』には著者ブレイディの身近にいる生身の労働者たちが登場し、彼ら・彼女ら自身の言葉で語る。20年前から英国南部ブライトンの「生粋(きっすい)の労働者階級の街」に暮らすブレイディ。ロンドンのイーストエンド、やはり「労働者階級の街」に生まれ育ったそのお連れ合い。2人の友人6人(男5人、女1人)とのインタビュー(pp.74-120)は『反乱』中の圧巻というべきだろう。「排外主義・移民排斥に走った愚かな連中」と十把一からげにされる彼ら・彼女ら(ただし6人中1人は“EU残留”に投票)の真実の声に耳を傾けてみよう。(名前はいずれも仮名)

◆サイモン(1955年ロンドン東部生まれ)「(“離脱”に投票した理由)誰も俺たちの言うことなんか聞いてやしないときに、俺たちがこの国を変えられるチャンスをもらった。使わずにどうする、と思ったね」「俺たちの言うことを金持ちやエスタブリッシュメントは聞いていない。…あいつらがあまりにも俺らを無視しているから…」「…俺は移民は嫌いじゃないんだよ。…俺は英国人とか移民とかいうより、闘わない労働者が嫌いだ…」「…俺たちが俺たち同士で団結してあいつらと闘わなきゃいけないのに、若い奴らとか移民とかはそんなこと考えてもみない。だからどんどん悪くなっていくんだ…」

◆レイ(1956年ロンドン東部生まれ)「(“離脱”に投票した理由)…どうせ離脱が勝つわけがないんだから、追い上げてキャメロン(首相)とオズボーン(財務相)を慌てさせようと思って入れたクチ。びっくりしたもん、次の日の朝…」「…こういう国の一大事をさ、ふつう俺ら市井の人間が決めるなんてできないだろ。…不満がたまってりゃ、政府に中指突き立ててやりたくなるよ、誰だって…」

◆テリー(1955年ロンドン東部生まれ。“残留”に投票)「『イーストエンド出身の労働党員』ってのは、もはやアイデンティティなんだよ。俺たちワーキングクラスには、保守党の奴らにカウンターを張っていくという任務がある」「(息子さんたちが保守党を支持するようになったら?)…そりゃあもう親子の縁を切る時だ」

◆ジェフ(1956年ロンドン東部生まれ)「…きちっと国が主権さえ取り戻して、国のことは自分たちで決められるようにならないと。EUの官僚たちなんて俺らは選挙で選んでないんだから、知らない奴らにあれこれ決められるのはもうまっぴらだ…」「残留したからって、俺らの未来は明るかったか?…あのままキャメロンとオズボーンにこの国を任せてたら、えらいことになってただろ…」「俺は、国境を閉ざせとか、一国で孤立しろとか言ってるわけじゃない。…国境を開くっていうなら、…どうしてEU国だけなんだよ。それも結局は閉ざしてることに変わりないんじゃないのか、EUの外の世界に向かって?」

◆スティーヴ(1958年ブライトン生まれ)「移民制限が必要だと言ったら、すぐレイシスト呼ばわりされるが、それは同じことじゃないだろう? どこの国だって国境制限している…」「俺は、職場のスーパーだって、半分以上は移民労働者だ。彼らをバカにしたり、変なことを言う英国人には、俺がいつだって相手になってやる…」「…EUは、結局ドイツとか、一部の国だけが得をするようにできている…」「…労働者階級は、間違っていると思ったら『間違っている』と言う。相手が聞かなかったら、首ねっこ掴(つか)んででもこちらを向かせて聞かせる。それでも聞かなければ、キッチンの流し台から何から彼らに投げつけて、聞かなきゃどういうことになるのか思い知らせてやる…」

◆ローラ(1961年ウェールズ生まれ。看護師として38年間勤務)「…実家のあるウェールズは、EUのおかげでもっとひどくなった。わずかに残っていた産業も海外の人件費の安い国に拠点を移したり…ビジネスや人が自由に国の間を動けるようになると、産業がなかったところはもっと産業がなくなって、人々の暮らしは惨めになるのよ。ここらでそれは止めないといけないと切実に思う…」「私は(医療の現場で)外国から来た同僚がいることに関しては何とも思わないし…自分の知らない国の人たちと一緒に仕事をすることは、世界が広がるから大好き。でも、人の命を預かる現場では、せめてきちんと英語が通じないといけないと私は思う」

 6人のインタビューを読みながら、私は2015年戦争法阻止闘争のとき叫ばれた「勝手に決めるな」「国民なめんな」「言うこと聞かせる番だ 俺たちが」のコールを思い出していた(ただし「国民」の語には違和感あり。「市民をなめんな」と言うべきか)。障がい者運動にも「私たちぬきに私たちのことを決めるな」というスローガンがある。“残留”に投票したテリーの「“貧困地区出身の労働党員”はもはやアイデンティティ」の言葉は、「オール沖縄」を引っぱる翁長雄志知事の「イデオロギーよりアイデンティティ」の旗印を思い起こさせる。翁長知事は、国連人権理事会で「沖縄の自己決定権はないがしろにされている」と訴えた。「ウチナーの未来はウチナーンチュが決める」という沖縄の人びとの願いと、「言うこと聞かせる番だ 俺たちが」という日本の若者たちの叫びと、「相手が聞かなければ首根っこつかんででもこっちを向かせて聞かせる」という英国労働者の決意とは、間違いなく底部で通じ合っている。

 “アイデンティティ”の過度の強調は、アイデンティティを異にする人たちの排除につながるおそれなしとしない。マジョリティによる“自己決定権”の行使が、マイノリティの人びとの“自己決定権”実現を妨げることがあってはならない。だから、ブレイディはこう言う。「…『地に足のついた人々』に『白人』などという人種の定義が“つけられている”のはおかしいのであり、その定義が“つけられる”ことによって…不要な分裂・分断を生むことがあってはならないのだ。…地べたに足をついて暮らしているすべての人間として、…人種も性別も性的指向も関係なく、自分たちに足りないものや不当に奪われているものを勝ち取らねばならない時代が来ているのだ」(p.275)

 ブレイディのこの指摘を“甘い”と評する向きもあるかもしれない。「人種も性別も性的指向も関係なく」と言ったって、現に移民労働者と英国人労働者との間に、女性と男性との間に、LGBTとそうでない人びととの間に、大きな格差や利害対立があるではないか。人種・性別・性的指向に基づく差別と排除を見過ごし、その実態に言及することなくEU離脱を「労働者階級の反乱」と持ち上げるなんて、排外主義・移民排斥運動に対する警戒心に欠ける。排外主義批判の弱い『反乱』はあまりお勧めできない、というわけだ。

 私はそうは思わない。移民排斥への批判が弱いというが、ブレイディ自身が“移民”だ。差別的なことを言われたり、差別的態度を取られた経験もある(p.5)。移民差別に対する怒りがないはずがない。だが、彼女は自らの活動の力点を排外主義・移民排斥の分析・批判よりももっと別のところに置いているようだ。先ほどの文章の2ページ前にはこうある。「…それまでは気にならなかった他者を人々が急に排外し始めるときには、そういう気分にさせてしまう環境があるのであり、右傾化とポピュリズムの台頭を嘆き、労働者たちを愚民と批判するだけではなく、その現象の要因となっている環境を改善しないことには、それを止めることはできない」(p.273)。排外主義は危険だ、と百回繰り返しても、排外主義はなくならないということなのだろう。

 ブレイディはブライトンの貧困地区の“底辺”託児所で保育士として働いた経験を『子どもたちの階級闘争−ブロークン・ブリテンの無料託児所から』(2017年4月、みすず書房)につづっている。同書中にこんなくだりがあった。

−−いろいろな色を取りそろえる意味は、やはりあるのだ。そしてそれは保育士と子どもたちの関係だけではない。「レイシズムはやめましょう」「人類みな兄弟」とプラカードを掲げていくら叫んでもできることはたかが知れている。社会が本当に変わるということは地べたが変わるということだ。地べたを生きるリアルな人々が日常の中で外国人と出会い、怖れ、触れ合い、衝突し、ハグし合って共生することに慣れていくという、その経験こそが社会を前進させる。それは最小の単位、取るに足らないコミュニティの一つから淡々と始める変革だ。この道に近道はない。(pp.85-86)−−

 この文章は、チェコから来た移民の子アンナと地元の英国人の子ケリーの激化する“抗争”について書いた「ふぞろいのカボチャたち」という章の中にある。英国人の子でよくキレるジャックとインド人の子アヌーシュカのやり取りを描いた別の章は、「分裂した英国社会の分析は学者や評論家やジャーナリストに任せておこう。地べたのわたしたちの仕事は、この分断を少しずつ、一ミリずつでも埋めていくことだ」(p.142)と締めくくられている。移民差別・排外主義を克服する保育実践にそれこそ泥まみれで悪戦苦闘してきたブレイディに対して、“排外主義批判が弱い”といった非難を投げつけるのは、あまりに失礼であり、またペダンティック(物知り顔の、学者ぶった、知識をひけらかす)すぎるのではないだろうか。

 本ブログのテーマに戻ろう。橋本の『新・日本』とブレイディの『反乱』の読み比べである。つまるところ、研究室から「階級」を見るか、地べたから「階級」を見るか、の違いだろう。そして断然、地べたからの視点に軍配が上がる。研究室に対する地べたの優位性については、『ユーロ危機と欧州福祉レジームの変容』(福原宏幸・中村健吾・柳原剛司編著、2015年8月、明石書店)の中で居神浩(いがみ・こう)神戸国際大学経済学部教授がブレイディの『アナキズム・イン・ザ・UK−壊れた英国とパンク保育士奮闘記』(2013年10月、Pヴァイン)を高く評価しつつ、次のように触れている。

−−研究者は基本的に公表された政策メニューから政策を支える論理は何かを読み解こうとする。それはきわめてオーソドックスな手法であるが、ときにはそうでないやり方―たとえばストリート・レベルの人間・社会観察から大きな示唆を得ることがある。
 …ブレイディみかこ氏のエッセイ集はその点で非常に衝撃的であった。それはまったく知らなかった事実の発見というより、それまで不確かでもやもやしていた何かが、生々しいリアリティをもって確かなものに変わった経験を得られたからである。1つひとつのエッセイが実にリアルである…(p.128)−−

 ブレイディの『反乱』の結論はこうだ。「労働者階級を民族問題から解放せねばならない。『白人』という枕詞(まくらことば)をつけさせ続けてはいけないのだ。すべての人々を結びつけ、立ち上がらせることができるのは、人種問題ではなく、経済問題だからだ」(p.277)

 実際、2017年6月の総選挙でコービン率いる労働党は、雇用創出・医療・教育・住宅・福祉など公共サービスへの支出増大の積極財政を打ち出し、鉄道・郵便の再国有化などをうたったマニフェストを掲げて大躍進。若者たちが労働者階級の街に行き、1軒1軒地域の人びとの家のドアをノックし、地べたの労働者たちと語り合うドブ板活動によって勝利がもたらされた。その経緯についても『反乱』の記述はとても参考になる(pp.50-58、pp.268-271)。

 ブレイディは昨年10月の日本の総選挙後、『中央公論』(2018年1月号)に掲載された日英往復書簡「左派は経世済民を語りうるか」の中でも、こう述べている。

−−…日本では「左派はお花畑」っていう表現がよく使われますけど、下部構造のない花は、根から水を吸えないので枯れますよね。経済こそ自由の下部構造なんだと意識する、もっと泥臭い―根を持つ花は当然ながら泥で汚れます―左派が出てこないとこの状況は変わらないと思います。(p.131)−−

 ことはやはり冒頭の「階級」の語義に戻ってくるのだろうか。「階級は…経済制度あるいは生産の社会的体制における地位をさす」「搾取・被搾取の関係は…生産手段に対する所有・非所有の関係から発生する」。経済制度あるいは生産の社会的体制の根幹部分から切り離されてきた人びとが、奪われたものを取り戻す。搾取され抑圧され差別され支配されてきた人びとの意思に搾取者・抑圧者・差別者・支配者を従わせる。自らの未来は自らが決める。その闘いへの効き目ある刺激剤を『反乱』は与えてくれる。

 2点、付記しておきます。
 1つは、ブレイディの視野が英国内だけに収まっていないこと。『反乱』の中でも、欧州全体の反緊縮の闘いを見すえつつ、スーザン・ジョージやケン・ローチ、ジュリアン・アサンジ、ナオミ・クラインらが顧問に就く「Democracy in Europe Movement 2025(欧州に民主主義を運動2025、略称"DiEM25"、https://diem25.org/」を紹介し、EUの民主的改革の方向を示しています。
 もう1つ、反緊縮の政策として、「反緊縮=適度の成長」をとるのか、「反緊縮+脱成長」をとるのか、私自身はまだ考えをまとめきれていません。

(編集部 浅井健治)
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