2012年05月30日

人気芸人を利用した生活保護攻撃を許さない

人気お笑い芸人の母親が生活保護を受けているという女性週刊誌の報道、自民党片山さつき議員らによるバッシングを機に異常な生活保護攻撃が続いています。生活保護問題対策全国会議はこの問題で5月30日、記者会見をおこないました。以下は、会見に出席した生活保護利用当事者お二人の発言の概要です。手書きメモに基づいてまとめたので不正確な個所があり得ることをご承知ください。

なお、同全国会議からは緊急声明や「扶養義務と生活保護制度の関係の正しい理解と冷静な議論のために」という意見書が出されています。ぜひそちらもお読みください。
http://seikatuhogotaisaku.blog.fc2.com/blog-entry-33.html
http://seikatuhogotaisaku.blog.fc2.com/blog-entry-36.html

また、発言中にある自民党の生活保護見直し策は次のPDF参照。
http://www.jimin.jp/policy/policy_topics/recapture/pdf/062.pdf

−ここから−

◎50代男性(現在受給中)

 まず思ったのは、出来レースではないかということ。自民党が保護水準の10%減額の案を出した直後。タイミングがよすぎる。
 バッシングが強くなり、偏見によって、受給者の就労に向けた出口が狭くなる。仕事を探している人たちがさらに精神的に追いつめられる。数か月前、「仕事がない」と命を絶った人がいる。普段からスーパーで買い物をするときも後ろめたさがある。さらにそういう気持ちが強くなるのかなと考える。
 (監視されていると感じる?)とくに仕事探しのとき。月に20〜30回ハローワークに行くが、面接に行ったのはたったの1回。その際も「生活保護を受けている」と言っただけで、私が犯罪者であるかのような目で見られた。「人のカネで飯を食っているような者は雇えない」と。今度のことで偏見がますます強まるのではないか。
 ある女性はふだんから引きこもりがちだが、今回のことで「私はもう表に出ない。代わりに買い物に行ってきてほしい」と。
 報道によってますます、生活保護を受けていることについて自問自答するようになる。一人きりで、相談する人もなく、仕事が見つからないと、どんどん自分を追いつめていく。受給して3年目の人があぶないという。1年目は生活は安泰になる。2年目は仕事探しで苦しむ。3年目、自問自答が始まる、「これでいいのか」と。自問しながら、どこで折れてしまうか。自ら命を絶つ人が増えるのではないか。受給者はただでさえ自殺率が高いが、それに拍車をかけるのではないかと危惧する。
 親子と言っても、いい関係ばかりとは限らない。「お前なんか死んでしまえ」と言い合うような関係もある。
 着るもの1着にも考える。何年かぶりでTシャツを買った。報道は「不正受給」ばかりクローズアップ。まじめにやっている人、就労で苦労している人の報道は聞いたことがない。そこに目を向けてほしい。
 経済的自立、「早く就職して生活保護から抜けろ」と言われるが、心の自立のほうが先だ。引きこもり、精神疾患の人、働く意欲を持てない人が多い。そういう人に今回の報道はダメージが大きい。引きこもる人はますます引きこもる。自分の価値は何だろうと考える。私だって、どこで折れるか分からない。

◎40代女性(最近まで受給していた)

 この会見に受給者が男女計4人来る予定だったが、2人が来られなくなった。人前で自分の保護受給のことを発言する−相当の勇気のある人でも、当日になると、ふとんをかぶって動けなくなる。
 私も時々体験を話すが、今回は一番きびしい。以前は、誤解を解くメッセージを発信したいと「わたしたちの声をきいてください」というチラシをつくって議員に届けたりしてきたが、ワイドショーで垂れ流し報道がされるここ1週間は精神的にきびしい。ニュースで(受給者を批判する)街の声のインタビューが流れると、外出できなくなる。
 夜10時、1時、朝4時、6時と電話してきて、「生活保護が切り下げになったらどうしよう。眠れない」と話す人もいる。
 首都圏で給付額は8万円。ガス、水道、電気、わずかな携帯代、プロバイダ料などで3万円なくなる。残り5万円で、食事の材料、トイレットペーパー、洗剤を買い、Tシャツを3か月悩んで買い、という生活。3千円財布にあれば「今週は大丈夫」という生活。生活費が1日千円を超えると、不測の事態があると対応できない。自転車がパンクしても直せない。かと言ってバスで行こうとすると高い。結局外出できない。
 保護が打ち切りになって最初に、靴下を買った。マスコミの取材を受けることはあるが、穴の開いた靴下を新しくするのにどんな苦労をするかを話す機会が与えられることはない。マスコミは列をつくるホームレスの人たちの映像は流すが、その人たちがお金を受け取った後アパートでどんな暮らしをしているかは流さない。誰も関心を持ってくれない。誰も聞いてくれない。語れる場面がない。
 嵐のような誤解の垂れ流し、偏見と差別の中では、私たちが街を歩けるようにはならない。
 受給者200万人の中には、車いすの人、チューブをさして呼吸している人、母子で赤ちゃんを一生懸命育てている人、いろんな人がいる。7割は病気や障害を持つ人たちだ。今回のことはその人たちにものすごく深い傷を与えた。家族の世話になることで苦しんできた人たちにさらに追いうちをかけた。
 (自民党案にある)現物給付など、暮らしが見えていたら、あり得ない。子どもはどんどん大きくなり、洋服を新しくしなくてはならない。ミルクから離乳食、ごはんに変わる。アレルギーのある子もいる。毎日の暮らしを営むということがどういうことか分かっていたら、絶対に現物給付など出てこないはずだ。給付された洋服を着て歩いたら、囚人服のようにあの服は生活保護だとなってしまう。
 私たちには心もあり、傷もつく。「尊厳」の言葉は使うなと言われたりするが、ここまで尊厳が踏みにじられたことに怒りを感じる。
 DV(ドメスティック・バイオレンス)被害者の場合、扶養の照会をされるだけで、相手に自分がどこにいるか分かってしまう。生活に困窮していることが知られてしまう。争っている相手から、あることないこと、自分に不利益な情報も役所に与えられてしまう。
 DV被害者は、暴力や虐待で一番弱っているときに申請に行く。扶養照会しないとダメです、と言われると、言い返せず、そういうものかと考え、申請を取り下げる方向に行く。家族から「お前なんか死ね」と言われているような中で扶養照会されるなど苦痛以外の何ものでもない。生きるための申請なのに、死ぬよりつらい選択を強いられる。
 資産調査は嫌がらせと思うほど細かく「丁寧」。子どもの貯金箱まで差し出させられる。一番さぐられたくないことにまで手を突っ込まれ、かき回される。こんなことなら路上で死ねばよかった、と思いながら、決定通知を待つことになる。
 保護の申請もできず、サラ金・ヤミ金に走る人も。不本意な仕事に就くことを余儀なくされる人も。女性の申請者に「体で稼げばいい」と言うケースワーカーは少なくない。これがまかり通るなら、暴力のもとにとどまらざるを得ず、いきなり命を絶つことにもなる。ところが、女性である小宮山大臣や片山議員が、女性への不利益がないように考えてほしいまさにその人たちが、生活保護を締め付けに来た。残念だ。
 「生活保護ってそんなにもらってるの?」と言う人がいたら、「そう言うなら、あなたこそ生活保護だよ。申請すべきだよ」と言ってあげたい。貯金があったらダメ、扶養できる親族がいたらダメ、自分が持っているものをすべて失くさなければ保護は受けられないのか。そこがなかなか分かってもらえない。
 保護が打ち切りになってから、仕事で得た収入は、手取り額は同じでも、違う。人にとやかく言われない8万円−何ものに代えがたい。壁がギュギュっと締まってくる閉塞感の中での8万円とは違う。
 私たちの暮らしに目を向けてほしい。使い回された映像を使わず、209万人の一人一人の暮らしをちゃんと見つめてほしい。

−ここまで−

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(浅井健治)
posted by weeklymds at 20:36| 報道/活動報告