2019年02月22日

米国への公開書簡:ベネズエラに対する内政干渉をやめよ

ベネズエラ危機について日本共産党志位和夫委員長が声明を発表しました。
【弾圧やめ人権と民主主義の回復を】
http://www.jcp.or.jp/web_policy/2019/02/20190221-venezuela.html

外国による干渉とりわけ軍事介入に反対しているのはいいことだと思いますが、それならなぜ米国による石油制裁に触れないのでしょうか。

ベネズエラの経済危機が深刻化した最大の原因は、同国の主要産業である石油産業に対し米国が制裁を強めたことです。日経新聞の以下の記事が詳細に解説しています。
【ベネズエラ、米石油制裁で進む危機 細る外貨獲得】
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO41130900Z00C19A2EA2000/

以下は、少し古いですが、1月24日にノーム・チョムスキーやメディア・ベンジャミン、フィリス・ベニスらが発表した「米国への公開書簡:ベネズエラに対する内政干渉をやめよ」の大意(Google翻訳の助けも借りています)です。

原文は
https://portside.org/2019-01-25/open-letter-united-states-stop-interfering-venezuelas-internal-politics

【米国への公開書簡:ベネズエラに対する内政干渉をやめよ】

[以下の公開書簡は1月24日、ベネズエラにおける米国による介入に反対して、ラテンアメリカ研究者や政治学者、歴史学者そして映画監督や市民運動リーダーその他の専門家70人が署名し発表したものである]

米国政府は、ベネズエラの国内政治への干渉−それは同国政府を転覆させることが目的だ−をやめなければならない。トランプ政権と南北アメリカのその同盟国による行動は、ベネズエラの状況をさらに悪化させ、無用の人的被害と暴力、不安定を招くことはほぼ確実だ。

ベネズエラの政治的両極化は新しいものではない。同国は長い間、人種的および社会経済的な境界線に沿って分断されてきた。しかし近年、両極化はさらに深まっている。これは一つには、選挙以外の方法によるニコラス・マドゥロ政府の排除を狙う野党の戦略に対する米国の支持によるものだ。野党はこの戦略をめぐって割れてきたが、米国の支持は、暴力的な抗議行動や軍事クーデターその他投票によらない手段を通じてマドゥロ政権を打倒しようという強硬派の野党勢力を後押しするものとなっている。

トランプ政権下、ベネズエラ政府に対する攻撃的な言葉遣いは、より過激で脅迫的なレベルにエスカレートした。トランプ政権の高官たちは「軍事行動」を口にし、ベネズエラをキューバ、ニカラグアと並ぶ「暴力のトロイカ」の一環だと非難している。ベネズエラ政府の政策に起因する諸問題は 、OAS(米州機構)および国連の下でも米国の法律やその他の国際協定・条約の下でも違法な米国の経済制裁によって、一層悪化してきた。この制裁は、石油生産の急激な減少をもたらし、経済危機を深め、多くの人びとが命を救う医薬品を手に入れることができないため亡くなる事態を引き起こし、ベネズエラ政府が経済の停滞から脱出することを可能とする手段を断ち切った。一方、米国その他の政府は、米国の制裁によって生じた経済的損害についてさえ、もっぱらベネズエラ政府だけを非難し続けている。

米国とその同盟国は、OASのルイス・アルマグロ事務総長やブラジルの極右ジャイル・ボルソナロ大統領ともども、ベネズエラを窮地に追いやった。フアン・グアイド国会議長をベネズエラ新大統領として承認する−OAS憲章の下では違法とされる−ことにより、トランプ政権はベネズエラの政治危機を加速させ、ベネズエラ軍部を分裂させ国民の分断・両極化を推し進めようと狙った。明白な、時として公言されている目標は、クーデターを通じてマドゥロを追放することである。

ハイパーインフレや物不足、深刻な不況にもかかわらず、ベネズエラは依然として政治的に両極化している国だ。米国とその同盟国は、暴力的で不法な体制転換の推進によって暴力をかきたてることをやめなければならない。トランプ政権とその同盟国がベネズエラで無謀なやり方を追求し続けるなら、間違いなく流血と混沌、不安定という結果が待ち受けている。米国はイラクやシリア、リビアでの体制転換の冒険的試み、そしてラテンアメリカにおける体制転換支援の長く暴力に満ちた歴史から何かを学ぶべきだった。

ベネズエラのどちらの勢力も相手を打ち負かすことはできない。例えば、軍には少なくとも23万5千人の兵士がおり、民兵は少なくとも160万人いる。これらの人びとの多くは、米国主導であることが明らかな介入に直面すればラテンアメリカで広く共有されている国家主権に対する信念に基いて、それだけでなく野党が力ずくで政府を打倒した際の弾圧から自らを守るため、戦うことになるだろう。

そのような状況における唯一の解決策は、話し合いによる解決だ。それはラテンアメリカ諸国で、政治的に両極化した社会が選挙によって不一致を解決できなかったときに採られた。2016年秋にバチカンが主導した、可能性を秘めた努力があったが、体制転換を望むワシントンとその同盟国から支援を受けられなかった。進行中のベネズエラ危機に対し実行可能な解決策があるとすれば、こうした戦略は変わらなければならない。

ベネズエラの人びとと南米地域の利益のために、そして国家主権の原則を守るために、これらの国際主体は内政干渉ではなくベネズエラが政治的経済的危機から脱却することを可能にするベネズエラ政府と反対勢力との間の交渉を支援すべきである。

(以下の署名者の名簿は略)

(編集部 浅井健治)
posted by weeklymds at 18:55| 報道/活動報告