2018年06月26日

「東アジアは平和への一歩を大きく踏み出した」 無償化裁判を闘う朝鮮高校生・父母は語る

東京朝鮮高校の生徒たち(当時)が原告となった「高校無償化」裁判。東京高裁での控訴審がきょう6月26日の第2回口頭弁論で結審しました。判決は10月30日(火)16時です。弁護団は「結果は安易に予想できないが、一審判決の行間から滲んでいたような偏見に満ちた判決の書き方はしないだろう」と見通しを語っています。

衆院第1議員会館で行われた報告集会での在校生代表の女子生徒(舞踊部キャプテンだそうです)とオモニ会会長の発言を紹介します。

◎在校生代表

2017年9月13日、忘れはしないその日から9か月という月日が経ちました。高3先輩がたの後ろ姿を見ながらこの闘いに臨んできた立場から、とうとう私たちが学校の顔である高校3年生としてこの場に立っています。

2018年が始まり、祖国の情勢がめまぐるしく動き、4月27日には全校生徒が体育館に集い、歴史的な北南首脳会談の瞬間をともに喜び合いました。祖国統一をただただ夢見ていた私たちも、実現されようとしていく今、驚きとうれしさで胸がいっぱいです。また、平昌オリンピックや朝米首脳会談といった、世界が平和への一歩を大き踏み出している今、私は朝鮮民族の一員であることをとても誇りに思います。

しかし、日本政府による民族教育への弾圧は何一つ変わることがありません。歴史を見直さず、当たり前にあるべき権利が与えられず、勝ちとるために闘うこの活動が私たちにとっては当たり前となっています。そんな中、私たち高3は2日後には修学旅行で祖国に旅立ちます。朝鮮半島をとりまく情勢が好転し、激動する時期に行くことになります。祖国とは何か、自分自身とどうとらえ合わせていくのか、同級生とともにこれまでの人生を深めていくとても貴重な期間を過ごすことになります。

 そんな私たちは日本で暮らす在日朝鮮人として、朝高生として何ができるのか。それは、たとえ日本で生まれ育っても朝鮮人としてのアイデンティティを持ち、ウリハッキョ(私たちの学校)、同胞社会を守り続けていくことだと思います。そのためにも、高校無償化の権利を必ずつかみとらなくてはならないと強く感じます。弁護士の方がたや日本の支援者、そしてオモニ会や卒業生のみなさんは私たちの権利のためにたくさんの力を注いでくださっています。だからこそ、私は明るく胸を張り、そして希望を与えられるような姿を見せたいと思っています。そして、私は朝高生が街中でチョゴリを何の抵抗もなく堂々と着ることができる未来をつくり上げたいです。

きょうは、そんな明るい未来を私たちがすべて担っていこうという気持ちをこめて歌を準備しました。高校3年生全員で歌います−『民族教育の誇り高く』。

◎オモニ会会長

日本政府が高校無償化制度から朝鮮学校だけを排除して9年目。62人の生徒が原告となった裁判からもうすでに4年4か月の月日が経ちました。このかんにどれだけの生徒が自分たちの代で無償化闘争を終えられず、この重い荷物を後輩に託さなければならないのかと悔しい涙を流しながら卒業していったことでしょう。

晴れやかであるべきはずの日に、そんな思いを胸に、わが息子もこの春卒業しました。そして今もなお、勉学に励み友人たちとともに過ごす、未来への夢を育むべき貴重な時に、街頭へ出て、朝鮮学校に対する高校無償化除外の不当性を訴え続けなければならないのです。入学式早々、校長先生は新入生を前にして「これからは君たちも一緒に闘わなければなりません」と言わざるを得ないこの現状はあまりにも残酷で、胸が痛みます。

私たちは、すべての子どもたちに学ぶ権利を、とうたった就学支援金制度からなぜ朝鮮学校だけが外されなくてはならないのか、ただ当たり前の権利を保障してほしいと訴えているだけにすぎません。朝鮮学校に学ぶ子どもたちは、日本で生まれ、日本で育っていく三世・四世・五世たちです。

先日、韓国の「ウリハッキョと子どもたちを守る市民の会」のみなさんが来日されて、文科省の要請に行った時、一緒に参加した高校2年生の男子生徒は「ぼくは日本のことが好きですし、日本のいいところをたくさん知っています。そんな自分たちの好きな国で差別されることはすごく悲しい。無償化問題も良心を持って取り組んでほしい」と話しました。文科省の役人の胸にはどのように響いたことでしょうか。「係争中なので発言は控えます」と返す役人に声を大にして言いたい。「あなたたちに子どもはいないのか」「人間味ある感情はあるのか」と。

9月13日のあの不当判決。どれだけの多くの人が強い怒りを覚え、深い悲しみに包まれたことでしょう。国を相手に闘うことの難しさを痛感しました。しかし、落胆ばかりはしていられません。報告集会は決起集会へ変わり、10月の全国集会、2月の再決起集会はわれわれがより一層連帯して逆転勝利をめざして最後まであきらめず、闘いぬくことを決意する場となりました。

原告となった生徒たちはとっくに朝鮮高校を卒業し、その父母たちもほとんどがいなくなった今、在校生とその保護者が当事者として向き合い、民族教育の正当性とそれを受ける権利があることを世論に訴えていきます。

いかなる理由でも、どんな国籍であろうとも、子どもたちは守られるべき存在です。これからも、明るい未来のためにオモニたちは団結してひるむことなく闘い続けます。

われわれ在日朝鮮人はつねに差別を伴いながら進んできたし、その差別から民族教育を守り育んできた歴史があります。こんなことで負けたりはしません。最後はともに闘ったすべての人と笑顔で抱き合える日までがんばりましょう。

昨今、北南首脳会談に続き、朝米首脳の歴史的、まさに世紀の会談が行われ、東アジアに平和が訪れようとしています。同じ船に乗り遅れた日本ですが、私は日朝関係の改善を心から願っています。日本政府は、朝日首脳会談を本気で望むのならば、まずは朝鮮学校に対する裁判をすべて和解し、高校無償化の適用と就学支援金の遡及適用、そして自治体に対する補助金見直し通達の撤回と、国家や政府による民族差別をやめさせ、朝鮮学校生徒たちの学ぶ権利を保障するよう強く強く求めます。

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『民族教育の誇り高く』を全員で歌う東京朝鮮高校3年の生徒たち
posted by weeklymds at 21:51| 報道/活動報告