2019年01月11日

新日鉄住金は1997年和解の精神に立ち帰れ

韓国大法院の元徴用工判決をめぐるマスメディアの報道に全く欠落していることがあります。1997年、新日鉄(現・新日鉄住金)が釜石製鉄所で働かされていた韓国人徴用工の遺族との間で、金銭支払いや慰霊事業への協力を含む内容の和解によって問題を解決したことです。

新日鉄住金はこの和解の精神に立ち返り、日本政府の指示に従うことなく自らの判断で、速やかに被害者への賠償を行わなくてはなりません。

以下は、和解について報じた「統一の旗」(現・週刊MDS)の記事です。

【画期的な勝利和解/日本製鉄元徴用工裁判/強制連行企業で初の金銭支払い/“日韓協定で決着”論に風穴/1997年10月3日 統一の旗第511号】
〈リード〉
 九月十八日、日本製鉄元徴用工裁判が新日鉄との間で和解解決した。和解内容は新日鉄による慰霊祭の実施や合計二千五万円の支払いなど。強制連行企業が被害者に金銭を払ったのは初めてで、時効などをたてに補償を拒む企業の論理を打ち破り、「日韓協定で解決済み」論に大きな風穴を開ける画期的な勝利和解だ。国相手の裁判は今後も継続する。
〈リード終わり〉

◎各原告に200万円 新日鉄

 和解成立を受けて九月二十二日、弁護団と支援する会が記者会見した。
 まず、長谷川弁護士が声明を読み上げた(別掲)。ついで、支援する会山本事務局長が談話を発表。ドイツの例と比較しながら、和解内容は金額の上でも被害者個人に支払ったという点からも国際的に高い水準であることを強調した。日鉄の強制連行について初めて研究し闘いのきっかけを作った支援する会古庄代表も「感無量だ」と感想を述べた(要旨別掲)。
 今回、新日鉄が金銭を支払ったのは、強制連行・強制労働の末に米軍の艦砲射撃で亡くなった原告の肉親の慰霊事業への協力とされている。新日鉄は「日鉄とは別会社」との理由で戦後処理の責任を回避し続けることはできなかったのである。しかも、遺族に対して支払ったことは、「時効」が補償を拒む理由にはならないことを証明している。今回の和解は「日韓協定で解決済み」という補償拒否の論理を突き崩し、他の戦後補償裁判を大きく励ますものである。
 このような和解を引き出した力は支援する会が作り上げてきた大衆的な裁判支援の運動だ。五万人を超える公正判決署名、東京総行動での新日鉄攻め、社長宅への要請はがきなどの行動が、社会的批判の広がりを恐れる新日鉄を追い込んできた。九月十一日に予定されていた全国総行動を前に新日鉄が「行動は中止してほしい」として和解案を示してきた事実にもそのことは明らかだ。
 最終交渉のため来日した原告代表六人は、十七日に釜石製鉄所内で行なわれた新日鉄主催の合祀祭に参加し、「厳粛な合祀祭で感激した」「父のことを思って涙が止まらなかった」と語っている。十八日の和解成立後は弁護団や支援する会会員と懇談。国との訴訟をあくまで闘い抜く決意を共に固めあった。

【和解内容】
 新日鉄は以下の慰霊の協力を行う。
@遺骨未返還の原告十名に一人当たり二百万円を、遺骨を受け取った原告一名に五万円を支払う。
A釜石製鉄所内の鎮魂社に原告の親族を含む韓国人被害者二十五名全員の犠牲者名簿を奉納し、合祀祭を会社の費用負担で行なう。
B韓国における慰霊に関わる費用の一部として一千万ウォン(約百四十万円)を負担する。

【声明/日本製鉄元徴用工裁判弁護団 日本製鉄元徴用工裁判を支援する会】
 我々は、今回の新日鉄の対応を英断として高く評価する。
 現在でも日本政府は、韓国に対する補償問題は一九六五年の日韓条約・日韓請求権協定と国内法で解決済みとする不当な主張を繰り返し、一方日本企業もこれに追随して「日韓協定と国内法で解決済み」「すでに時効」であるなどと主張し、韓国の戦争被害者の補償要求をことごとく拒否する理不尽な態度に終始している。こうしたなかで、日本のトップ企業の一つである新日鉄が、韓国の戦争被害者に対して直接金銭を支払いかつ慰霊事業への協力を行った。この事実は、戦時中の強制連行・強制労働の戦後処理の責任を承継法人である新日鉄が人道的立場から認めたものであり、実質的に「日韓協定による解決済み論」に大きな風穴をあけた意義があると考える。
 また、支払われた金額も一九八八年に議員立法で成立した「台湾住民である戦没者の遺族等に対する弔慰金等に関する法律」に基づき、台湾住民で戦死した軍人や軍属の遺族、台湾住民で戦争中に著しい障害を受けた軍人や軍属またはその遺族に、弔慰金または見舞金として支払われた一人二百万円と同程度のものであり、十分評価できる金額である。
 これによって、遺骨返還、未払金返還等を求めた裁判は新日鉄との間では解決したが、日本政府とは引き続き裁判が継続する。日本政府の朝鮮人強制連行・強制労働、そして賃金等の未払いと不当な供託、犠牲者の遺骨未返還の責任は重い。我々は一層の原告団との団結を固め、法廷での実質審理を強めるとともに、他の強制連行・強制労働裁判の原告・支援団体とともにILOに提訴し、国内外の世論に訴え、日本政府を包囲し、原告の要求を実現する決意である。
 そして、今回の新日鉄との解決がすべての戦後補償実現につながるよう、韓国・中国をはじめアジア各地から日本政府や企業に対して戦後補償を求めているすべての被害者および支援団体との連帯を強化し、引き続き奮闘するものである。

【和解の成果に感無量/支援する会代表・古庄正駒沢大学教授】
 私が日本製鉄の強制連行について初めて論文を書いたのは八六年の一月。その研究が今日、こういう形で実を結んだ。感無量なものがある。
 この訴訟は、戦後補償要求に対する企業や国の対応を深く問うものだ。戦争直後、現地企業と朝鮮人連盟が補償金額まで合意していたのを厚生省や企業本社が圧力をかけてつぶした。そして未払い金問題の解決策として「供託」の利用を編み出し今日まで維持している。
 強制労働の具体的資料はあるので論理的には勝てるだろうが、具体的に勝つことは無理かと思っていた。それが日本国内はもちろん、世界的にも決して少なくない額で妥結した。戦後補償裁判が膠着して動かない中でこうした回答を引き出した意義は大きい。

【勝利を喜ぶ原告たち】
◎国との訴訟も頑張る
◆洪湧善(ホン・ヨンソン)さん
 弁護団をはじめとする支援の皆さんのこれまでのご協力に感謝する。今後は日本国を相手にした裁判が残っている。これからも頑張っていきたい。

◎二百万が二億にも感じる
◆趙英植(チョ・ヨンシク)さん
 これが最善の解決とは思わない。しかし支援してくれた皆さんのことを思うと、受け取った二百万が二千万にも二億円にも感じる。
 この結果は韓国の次の世代にも伝えていけるものだ。戦後補償を求める運動を積み重ねることで日本も少しづつ変わっていくだろう。

◎これで魂を韓国に戻せる
◆李相九(イ・サング)さん
 金額について不満はあるが、新日鉄が事実を認めたこと、慰霊祭を行なうということは救いだ。ようやく韓国に魂を戻して慰霊を行なうことができる。
 原告だけの力ではとうていここまで来ることはできなかった。強制連行の第一の責任は日本政府にある。引き続き支援をお願いしたい。

◎支援のおかげで闘えた
◆李康仙(イ・カンソン)さん
 皆さんのおかげで確信を持って今日まで闘ってこれた。自分の父たちが戦争中に行なったことは間違いだと言い切って支援の闘いを進めてきた皆さんに敬意を表したい。
 韓日協定には多くの問題があり、今後も正していかねばならない。

(浅井健治)
posted by weeklymds at 16:03| 報道/活動報告