2012年09月13日

シカゴ教員ストは新自由主義教育改革との闘い

シカゴで9月10日、公立学校の教員による25年ぶりのストライキが始まりました。オバマ大統領の首席補佐官だった実力派市長ラーム・エマニュエルの進める教育改革に反対し、約3万人の教員と支援者がストを続けています。

米独立メディア「デモクラシー・ナウ!」の9月11日の番組「シカゴの教員スト:数千人が集会、企業優先の教育改革に反撃」で、シカゴの公教育問題を取材し続けているジェイサル・ノア記者が次のように報じています。

−ここから−

昨日(9月10日)、数万人の教員と支援者がシカゴの中心部をデモしました。赤いTシャツ姿が一面海のようで、私が見た中で最大のデモの一つでした。みんな、このストで自分たちの考えを主張することができるととてもエキサイトしています。この国の教育政策の多くは上から、教室で授業した経験などないトップの連中から、打ち出されますからね。この連中は、教育改革の被害をもろに受ける低所得地域で過ごした経験だってないんです。

教員たちは自分たちのためだけでなく児童生徒たちのために闘っています。その教員たちをシカゴが団結して支えているのは感動的です。これこそシカゴの、また全米の多くの人びとがぜひ後押ししたいと待ち望んでいた出来事です。

(キャスターのエイミー・グッドマンが「シカゴ教員労組の新しい指導部について、カレン・ルイス新委員長について説明を」と求めたのに答えて) それはシカゴ教員労組を語る際に忘れられがちなとても重要なポイントです。カレン・ルイスの出身母体CORE(一般教育者評議会[教員労組の幹部ではない一般の組合員でつくる活動家集団])は、学校の閉鎖・統廃合と闘い、「学校改革」に反対する地域づくりを共に進めてきた教員たちのグループです。「学校改革」はシカゴで「ルネサンス2010」プログラムと「落ちこぼれゼロ」法とともに始まった政策で、地域を荒廃させました。数百人の教員の解雇につながりました。そして、以前の組合指導部はこれと闘わず、この政策に反対する地域づくりを進めてこなかったのです。

多くの学校が閉鎖になったいわば廃墟の中から、新しい教員グループが立ち上がり、ついに2010年、全米で3番目に大きい公立学校区を組織する全米第3位のシカゴ教員組合の指導権を握りました。これは全国的に影響を及ぼします。というのは、教員が地域の人びと、公教育の存在理由そのものである親たちや児童生徒たちと手に手を取って協力し合うようになったのは、長い歴史の中で初めてのことだったからです。そう、手を取り合ってです。それは厳しい闘いです。相手とするのは、学校の民営化・閉鎖、テストの強化という政策を推し進める、この国で最も大きな力を持つ勢力ですから。

(オバマの首席補佐官だったこともあるエマニュエル・シカゴ市長について問われたのに答えて) ラーム・エマニュエルは(21年間シカゴ市長として君臨した)ダレイ市政の一員で、ダレイ市長と密接な関係にありました。非常に企業寄りで、トップダウン型のやり方です。教員や親たちのことは全く考えません。今年初めには、学校閉鎖と闘っている地域の運動にいちゃもんをつけるようそそのかして不満分子に金を払うところまで落ちぶれています。教員とスト支援の地域の人たちが闘っている相手はこんな人物です。

(エマニュエル市長が市側の回答について「この回答は教員たちの要求を尊重し、児童生徒たちを正当に評価し、納税者にも公正なものだ」と自画自賛していることについて) そこがキイポイントです。というのは、メディアはスト決行が発表された時の記者会見でも、シカゴ教員労組のルイス委員長に対し「これはカネの問題なんでしょう? 賃上げでしょう。カネを受け取ったらいいじゃないですか」と聞いていたんですから。ルイス委員長の答えはこうです。「これは単にカネの問題ではありません。教室の環境の問題です。学校に空調を設置してほしいという問題です。学級定員を適正なものにしてほしいという問題です。教員の評価、教員の給与を生徒のテストの点数とリンクさせないでほしいという問題です」

市の回答に対し、組合は耳を傾けはしたものの、組合を支持する地域の人びとのことを考え、地域の人びとも教員たちのことを考え、すべての要求についてしかるべき対応が示されない限り、回答を受け入れることはないでしょう。

(エイミー・グッドマンが、ある高校生の発言を紹介。この高校では、長年務めた校長が先月、説明もなく罷免され、新しい校長に代わった。新校長がとった施策について高校生はこう語る。「新しいベラスケス校長はAPクラス[優秀な生徒が履修可能な大学レベルの科目]を3つも減らした。新校長のせいで時間割全体がめちゃくちゃになってしまった。補修クラスをベラスケス校長は導入したけど、それって侮辱よ。お前たちは出来が悪い、APクラスなんて必要ない、お前たちはバカだ、と言ってるようなもの。私は最初っから、ベラスケス校長のやり方はあの人の個人的な立場から来てるんじゃないって感じる。校長は『テストの点数をみてごらん。ひどい出来よ』と言って説得しようとしたけど、私たちのテストの点はよくなってきているし、全体としてAPクラスの合格者・登録者も増えてきている。だから、学校を動揺させるベラスケス校長の決定はあの人自身のものじゃなくて、もっと上の人の言うことに従ってるだけ」。この発言が教員ストとの関係で持つ意味について問われてジェイサル・ノア記者は)

そうですね、この高校の話はシカゴ全体の話でもあり、またストライキについての話でもあります。縮図ですね。高校生が言うのは、教育におけるトップダウンの決定、生徒の話を全く聞かない、ということです。罷免された校長は、愛されていた校長であり、地域から選ばれていた。その校長が解雇された。他に、2人の長年務めた教員、この高校の創設時からのメンバーも解雇された。この高校は「ソーシャルジャスティス高校」といって、メキシコ系アメリカ人地区、とても貧しい地域ですが、ここに学校がなかったことから地域の人びとを組織化し、ハンガーストライキまで闘って設立させた学校です。2人の創設時からの教員は疑問の声を上げたがために解雇されました。高校生たち自身も今年初め、ストライキをしました。校内で話をすることを拒否し、授業をボイコットし、座り込みをしました。今、何百というシカゴじゅうの学校で起きていることとまさに同じです。

地域が闘わなくてはならない理由がここにあります。きわめて基本的なサービスを受けるためにシカゴじゅうで共に闘わなくてはなりません。そういう基本的なサービスさえ奪い去られています。しかし、市長は相手にする学校を間違えましたね。ソーシャルジャスティス高校です。この高校の生徒たちはよく組織されているし、地域の支援を得ています。組合も彼らを支えている。そして高校生たちも今度は先生たちのストの支援のために出かけています。解雇された教員は復職しました。APクラスも復活しています。前校長の復帰をかちとること、そして学校のコミュニティ管理を実現することをめざして彼らは今も闘っています。

もう一言だけ付け加えると、この高校には地域学校評議会がありません。しかし、シカゴのほとんどすべての学校には地域学校評議会があります。これは1987年に始まった都市部の学校における民主教育の最もラディカルな実験です。シカゴは都市部の公立学校区では唯一、コミュニティおよび教員が予算や校長の人事、学校の運営について発言権を有するところです。都市部の教育をどう立て直すかが全米で問題になっていますが、シカゴがその答えです。シカゴの低所得地区の学校でいい成績を収めているのは、地域学校評議会のある学校です。私は3月に、物理的には崩壊している学校を訪れました。壁は崩れ、手すりは壁から落ちていました。しかし、地域が援助しました。教員たちはこの最も貧しく犯罪も多発している地区の親たちや祖父母たちと協力して活動していました。そしてシカゴの低所得地区の学校で7番目に高い成績を収めることとなりました。ここに、公教育、都市部の教育、コミュニティと教員と生徒とが共に協力し合って自分たちの考えを主張していくことについて学ぶべき教訓があります。

−ここまで−

(浅井健治)
posted by weeklymds at 18:14| 報道/活動報告