東京電力の株主が福島原発事故当時の取締役27人の個人責任を追及し、総額5兆5040億円の賠償を求めている東電株主代表訴訟。東京地裁に提訴して1年たったのを機に、経過報告を兼ねた集会が3月16日、東京・渋谷で開かれ、約150人が参加した。
脱原発・東電株主運動の木村結さんは、株主代表訴訟が証拠保全を東京地裁に申し立てた結果、東電テレビ会議の録画がマスコミに公開され東電の秘密が暴露されてきたこと、20年以上株主総会で脱原発を提案してきた株主運動の中で蓄積された議事録が株主代表訴訟だけでなく福島原発事故告訴においても証拠として採用されたことを紹介。「東電が株主すらだまし続けてきた証拠が、株主代表訴訟や告訴団運動で日の目をみた。長い間株主運動を続けてきて良かった」と話した。
河合弘之弁護士も訴訟の意義を強調する。「まだ誰も原発事故の個人責任を取っていない。第2次大戦で言うと、東条英機や宇垣一成がまだ無罪で街をうろうろ歩いているのと同じだ。責任追及をきちんとして、そこを脱原発の基礎におく必要がある」
トークライブで芸人のおしどりマコ・ケンさんは、東電の記者会見に通いつめ、大気中に排出された放射線量を開示させてきたといったエピソードを笑いを誘いながら披露した。
パネルディスカッションには海渡雄一弁護士、政府事故調委員を務めた吉岡斉・九州大学副学長、朝日新聞の木村英昭記者が登壇。
吉岡さんは、大津波災害の危険性が過去複数回指摘されていたにもかかわらず、東電が対策を怠り大惨事を招いたと政府事故調が分析したことを報告し、「その経緯を実名を挙げて報告している点が功績の一つであり、株主代表訴訟にも役立っている」と述べた。
海渡さんは、会社および個々の役員ごとに津波予見と結果回避措置の可能性を検証していくことが今後の焦点と説明し、「最終的には東電にすべての情報を公開させる制度を作る必要がある」と意気込みを語った。
