2023年01月21日

斎藤幸平『ぼくはウーバーで捻挫し、山でシカと闘い、水俣で泣いた』を読む

【「学び捨てる」「共事者」として/斎藤幸平著『ぼくはウーバーで捻挫し、山でシカと闘い、水俣で泣いた』(KADOKAWA)】

長いタイトルからすぐに連想したのは、3年前に出た『アマゾンの倉庫で絶望し、ウーバーの車で発狂した』(J・ブラッドワース、光文社)だ。英国のジャーナリストが最底辺労働の現場に入り、働く者の尊厳を奪う「ギグ・エコノミー」の実態に迫った傑作ルポルタージュだった。

本書も、ベストセラー『人新世の「資本論」』を著した気鋭の経済思想家が研究室を飛び出して日本各地の現場を訪ね、そこで体験したことを綴った一種のルポルタージュといえる。だが、一つ大きな違いがある。「ぼく」が主語になっていること、現場の実践に触れて気づき、学び、変わっていった著者自らをドキュメントの対象にし、その歩みを記録していることだ。

書籍化のもとになったのは、毎日新聞に2020年4月から22年3月まで連載された「斎藤幸平の分岐点ニッポン」。月1回のペースで著者が訪れた現場は、持続可能な林業を目指す兵庫・豊岡の労働者協同組合だったり、昆虫食の材料となるコオロギを飼育する徳島・鳴門の養殖場だったり、寮を追い出された外国人技能実習生が身を寄せる岐阜・羽島のシェルターだったり、多岐にわたる。

現場に入る著者の構えは一貫している。理論を振りかざすとか教え諭すといった偉ぶった態度はみじんもとらない。それどころか、それまで見えていなかったことに気づかされ、自分の問題として捉えてこなかった想像力の不足を思い知らされ、と反省しきりだ。阪神大震災の被災者が住む団地のすぐそばに巨大な石炭火力発電所があることも、勤務していた大阪市立大学の真横に差別や貧困と闘い続ける部落が存在した歴史も、知らなかったと率直に述べている。刊行記念イベントで自らいわく、本書は「私の学びの本」なのだ。

謙虚な姿勢は何から生まれるのか。「知のもつ権力性を内省する」ことだと著者は言う。「いまだに左派の中では、経典みたいなものの力を利用して自分たちの活動を正当化する。『マルクスがこう言ってるからこうでしょ』となりかねず、非常に危険。そこを反省し、学ぶ場所に自分を意識的に置くことが新しい知への誘(いざな)い、きっかけになる」と上記イベントでも話していた。

知の権力性を脱却するためのキイワードが、著者自身の造語ではないが、二つある。

一つは、ポストコロニアル研究者スピヴァクが提唱する「学び捨てる(unlearn)」こと。新たな社会の可能性を見出すために、特権を捨て、他者と出会い、別の視点を一から学び直す必要がある。そのことが新しい人びととのつながりと新しい価値観を生み、もう少し生きやすい社会を作ることにつながっていく。

もう一つは、福島・いわき在住の地域活動家、小松理虔(りけん)さんが提案する「共事者(きょうじしゃ)」という考え方。語ることを真の当事者だけに限定すると、大多数の人は考えることもしなくなる。「事を共にする」ゆるい関わりに根ざし、みんなが「共事者」として当事者に思いを馳せ、さまざまな違いを超えて声を上げ、暮らしと命と地球のために変革に向けた新しい発想を紡ぎ出すのだ。

著者は、資本主義に取って代わる新たな社会の構想を提示することも忘れない。民主的で公正な富の管理を行うこと、〈コモン〉型社会としての「コミュニズム」である。そして、それは「基盤的コミュニズム」として、今の資本主義社会にもすでに部分的・潜在的に存在しているという。本書のテーマは、そうした日本における〈コモン〉の実践との出会いにほかならない。

読み終えて、政治新聞の編集者である私にとっても「現場」は汲めども尽きぬ「学び捨てる」機会だと思いを新たにした。今後も、できれば「共事者」として(まかり間違っても「前衛」などとしてではなく)現場に赴きたいと願っている。

(東京・週刊MDS編集部 浅井健治)

[平和と生活をむすぶ会ニュースレター『むすぶ』2022年11・12月号より同会の了承を得て転載させていただきました]

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2022年09月25日

9・23気候アクション「気候危機は世界のすべての人の問題」「私たちが変われば未来を守れる」

9月23日、「世界気候アクション」の日。日本でも「気候危機はいのちの問題」をスローガンに各地で行動が取り組まれました。

東京では、渋谷の国連大学前広場を出発点に「気候マーチ」。参加者の多くは若い世代です。「進み続ける気候危機/それ止めるのは今しかない」「未来守るのはわたしたち/必要なのは気候正義」「What do you want?(求めるものは?)/Climate justice!(気候正義!)」「When do you want it?(それをいつ?)/Now!(今すぐ!))」とコールしながら、同じ若者たちでにぎわう青山通り→表参道→明治通り→ハチ公前を通って国連大学前に戻るコースを元気よく歩きました。

マーチに先立つオープニングでの4人の発言を以下、紹介します。

−司会あいさつ ここから−

Fridays For Futureはスウェーデンの環境活動家グレタ・トゥンベリの活動をきっかけに世界に広まったムーブメントです。本日の世界気候アクションは私たちFridays For Futureだけでなく、多くの活動団体のみなさんとともに企画したアクションです。気候危機以外のさまざまな分野で社会問題に対し声を上げている方が集まり、現在加速し続ける気候危機を肌で感じる私たちがこのマーチに集結した。

きょう私たちが訴えることは性別・人種・取り上げる社会問題といったすべての違いを超える。今回のテーマは「気候危機はいのちの問題」。私たちの世界は現在、危機に直面している。本日のアクションはすべての違いを超えて、私たちとその未来のいのちを守るため、一つとなって声を上げることを目的としている。

このアクションでは、あらゆる差別・暴力・戦争に反対し、科学に基づいて声を上げる。

−司会 ここまで−

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−オーガナイザー発言その1 ここから−

はじめまして。Fridays For Future Tokyoで活動しているXXです。私はこの6月からFridays For Future Tokyoの仲間になった。

私が活動を始めたきっかけは、私の15年という短い人生の中で比べても、小さい頃と比べて夏がすごい暑くなったなと感じる。また、小さい頃は毎日ここ日本では雪が降っていたと思うが、最近だと定期的に雪が降ることがなくなったように感じる。台風や豪雨など大きな災害の報道が不自然に増えていることも、気候変動を感じたきっかけです。

何が起きているかは分かっていたけど、忙しいからとなかなか大きなアクションに踏み出せていなかった。でも、実際にFridays For Futureのアクションをしている同じ年ぐらいの仲間たちの姿を見て、「私にもできるんだな」と感じて、Fridays For Futureの仲間になった。

FFFに入ったら、気候変動は私が感じていたり知っているよりもずっと深刻であることが分かった。例えば、温室効果ガスの半分以上を先進国の人びとが排出していながら、気候変動の影響を強く受けるのは途上国とか社会的弱者と呼ばれる人たちです。

でも私は、気候変動を止めるにはまだ間に合うと思うから、活動している。しかし、1・5度のタイムリミットがもう7年を切った中で、個人だけの小さなアクションではもう間に合わないとも同時に感じている。企業や政府の大きな変化が必要です。じゃぁどうやったら企業や政府を変えられるのかといったら、より多くの市民が変わる必要があると思う。私たちが変われば企業や政府を変えることができて、世界を変えることができる。

もっと多くの人びとに日本の、いや世界の気候が危機的状況にあることを他人事ではないと知ってほしい。知らないことが悪いんじゃなくて、知ったらアクションをしてみんなに伝えていけばいいと思う。声を上げることに少し緊張することもあるけれど、私たちが変われば世界が変わるから、未来を守れるから、きょうも声を上げていこう。そのことを伝えるために、きょうマーチをする。

−その1 ここまで−

−オーガナイザー発言その2 ここから−

Fridays For Future TokyoのYYと申します。高校2年生です。もともと交通分野に興味があって、そこから気候危機に関心を持って、いま解決をめざしてみなさんと一緒に活動している。

9月になって少し落ち着いてきたとは思うが、今年の夏ってすごい暑かったですよね。昔より暑くなった、みたいな話ってよく僕も耳にする。一方で、人はすぐにその暑さに慣れてしまう。しかし、気候危機は知らぬ間に進行する。例えば、現在パキスタンの国土の3分の1が水に浸かる大洪水が起きている。この原因の一つには、温暖化による氷河の融解が挙げられている。こんな状況を、みなさん予測していただろうか。

気候危機は知らぬ間に進行する。このまま気候変動が進んでしまうと、多くの人が知らぬ間に問題が発生し、みんなが予測できない大災害が発生してしまうかもしれない。気候危機は誰かの問題ではなく、世界中のすべての人にとっての問題なのです。お金持ちでも逃れることはできない。リミットは2030年と言われている。

想像してみてください。2030年の気温上昇を1・5度以下にするために、気候危機に対してともに動き出す各国政府、企業、そして世界−それはどんなに素晴らしいことだろうか。きょうのマーチが、人びとが気候問題に苦しむことなく生きられる社会への布石となることを願ってやまない。2022年9月23日、きょうを時代の曲がり角に。動くなら今しかありません。

−その2 ここまで−

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−『人新世の「資本論」』の斎藤幸平さん ここから−

気候変動は待ったなしなので、この資本主義の中心である表参道において、私はきょう、"Socialism or Extinction(社会主義か絶滅か)"ということで、システムを抜本的に変えていかなければ、エコバッグとか地球のために節水しましょうみたいな話じゃなくて、地球を破壊することによって大金を儲けている化石産業であるとか、電力がひっ迫して人びとが苦しい思いをしているにもかかわらずお金を儲けている電力産業であるとかに対して、私たちは変化を求めていかなければいけないし、そうしないと、このあいだのパキスタンも含めてどんどんどんどん被害がひどくなってしまう。

私たちが大きな声を上げて、気が付かないで歩いている人たちにもしっかりこの問題を知ってもらって関心を持ってもらえるように頑張りましょう。

−斎藤さん ここまで−

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(編集部 浅井健治)
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2022年09月17日

ウクライナ軍"反転攻勢"で平和は来るのか−ウクライナ平和主義運動ユーリー・シェリアジェンコさんの訴え

ウクライナ軍の「反転攻勢」が伝えられています。ハルキウ州「全域解放」が間近とも。しかし、それでウクライナに平和は来るのでしょうか。

DSA(アメリカ民主主義的社会主義者)国際委員会は8月28日、「ウクライナ戦争、影響と展望:女性、労働者、グローバル・サウス」と題するオンライン・セミナーを開きました(反戦団体CODEPINK、World BEYOND War<戦争に打ち勝つ世界>共催)。以下は、パネリストの一人、「ウクライナ平和主義運動」事務局長ユーリー・シェリアジェンコさんの発言です。

ユーリーさんはウクライナ、ロシア両国で強まる反戦運動・良心的兵役拒否運動への弾圧を批判し、「非暴力の社会、戦争・軍隊・国境のないよりよい世界を構築する闘い」の必要性を熱を込めて訴えています。

(ユーチューブの自動生成字幕をグーグル翻訳アプリにかけた日本語訳をベースにしました。人名・地名などは字幕自体、不正確です。それらを含め、多々あるであろう誤訳・不適訳、何とぞご容赦・ご指摘くださるようお願いいたします)

同セミナーは以下で視聴することができます。ユーリーさんの発言は18分50秒あたりから。
https://international.dsausa.org/ukraine/

−ここから−

[司会 次はユーリーがウクライナから軍国主義反対について語る。 ユーリー・シェリアジェンコはウクライナを拠点とし、World BEYOND Warの理事、ウクライナ平和主義運動の事務局長、良心的兵役拒否ヨーロッパ事務所の理事を務めている。平和運動への参加に加え、キエフのXX大学で法学博士号と仲裁・紛争管理修士号を取得した。ジャーナリスト、ブロガー、人権擁護者、法律学者、学術出版物の著者、歴史における法理論の講師でもある。]

親愛なる友人のみなさん、ウクライナの果てしない戦争について議論する機会を与えてくれてありがとう。この戦争は、暴力的な資本主義の不当な栄光と利益を助長し、女性の不安定さを増大させ、労働者を意志に反して兵士に変え、グローバル・サウスの飢えた人びとに食料を供給する道を閉ざしている。いかなる戦争も、抑圧された階級の苦しみを深刻化させる。戦争の真の犠牲者は戦争する政府ではなく、交戦諸国によって殺害され、苦しめられ、生活手段を奪われた、あらゆる場にいる平和を愛する市民たちだ。

ロシアとウクライナの戦争は、世界で進行中の武力紛争の10倍に上るとされる最大の資金が提供された戦争であり、地政学的支配をめぐる多面的な大国間の争いのカギとなる戦場であり続けている。東西対立の深化とともに状況は悪化し、数万人が死亡し、数百万人が難民や国内避難民となり、多くの住宅や重要なインフラが破壊された。ロシアによる侵略の後、ウクライナ経済は混沌へと沈み込んでいる。ロシア経済は西側の制裁によって深刻な打撃を受けている。両国でインフレは所得の5分の1を食い尽くしている。

NATOと米国は今も軍事支援を中心に置いている。米国の兵器産業のマーケティング部門は、ロシア・中国との戦略的ライバル関係を宣言し、核の小競り合いとウクライナへの武器供給を続け、流血を無限に引き延ばしている。ロシアは、NATO が核のエスカレーションへの準備を示すことで核再軍備に向けた西側諸国のより多くの支出を誘発している中で、単独で戦っているようだ。すべての核保有国が核兵器禁止条約をばかばかしく中傷し、署名を拒否したのは恥ずべきことだ。

数年間にわたる無意味で無分別な戦争における流血の末、ロシアとウクライナが互いに極端に弱体化したことが交渉につながる可能性はあった。しかし、それは墓地における平和であり、常識や平和運動の勝利でも、唯一実行可能なウィンウィンの(双方にプラスになる)選択肢でもなかっただろう。撃ち合いをやめて話し合いを始めるのが早ければ早いほど、国連は頑固な好戦主義者との間でグローバル・サウスへの食糧供給開始という奇跡を首尾よく起こすことができたはずだ。しかし、30億ドルの予算を持つ国連はウクライナでの戦争をほとんど止められず、この戦争には西側だけですでに400億ドル以上の資金が提供された。他の進行中の戦争に全世界で2兆円もの予算がつぎ込まれていることは言うまでもない。常軌を逸した莫大な公的資金が軍事支出に浪費されている。

米国とヨーロッパ諸国では、インフレが急速に進んでいる。インフレのこの普遍的なマイナスの影響は、すべての経済が相互に依存しており、これ以上悪い制裁はなく、敵対的な政策が世界経済をライバル同士に分割しかねないことを示している。世界中が、従来の経済構造の軍事化と社会における暴力の過剰生産に苦しんでいるが、これは主にこの構造的な問題が原因であり、軍国主義プロパガンダによって悪魔化されたある種とてつもなく邪悪な敵のせいではない。したがって、非行を犯した者、すべての交戦当事者の犯罪行為の不公平な扱いは適切ではなく、犯罪者はもちろん責任を負わなければならないが、国連の人権機関やアムネスティ・インターナショナルなどの市民団体の報告に見られるように、この戦争の当事者双方において戦争犯罪と深刻な人権侵害が行われていると指摘することは重要だ。

例えば、ザポリージャ?原発周辺の戦闘では双方がいかに無謀な行動をとっているかが分かる。ロシア軍が同原発を制圧し、標的に変えると、ウクライナ軍が同原発を攻撃。原発を非武装地帯にするという国連の提案は、何をすべきかの最良の考えだが、両交戦当事者ともこの民間施設に対する軍事的支配の野望を放棄するつもりはない。

ウクライナ平和主義運動のメンバーで、プロ水泳選手・良心的兵役拒否者のアレクサ・フィオニックは、数十年前ソビエト軍への入隊を拒否し、海を泳いで渡ってソ連から逃れようとした。現在はニプラ川岸、アンエルハダルの対岸のマルハニッツ市に住んでいる。彼はこの戦闘のあらゆる恐ろしい物音を聞き、法律に基づいて居住地を離れる許可を求めた。許可なしに合法的に生活することはできない。しかし、軍当局は彼に許可を与えることを拒否した。今のところ軍隊で必要とされていないため、軍は彼を動員しようとは強く主張しなかった。軍隊は社会を動員し、戦争機械に従属させる。それは農奴制とも呼ばれる。農奴制と奴隷制という公式用語は用意された現実のものだ。軍隊は、徴兵のために、また塹壕を掘るなどの強制的作業のために、いわゆる予備役を必要とする。多くの人びとは、ウクライナが長期にわたる災害に陥っていることを理解している。

男性の海外渡航を許可するよう求めるゼレンスキー大統領宛ての2つのオンライン署名は、数万筆を集めた。大統領はこれらの請願に拒絶と軽蔑をもって応えた。ウクライナ国家国境警備隊は6000人以上の男性、いわゆる軍事動員忌避者を国境で足止めし、徴兵センターに送り込んだ。多くの人が西側の大学に入学許可されているが、国境警備隊は法律に反して彼らのウクライナ出国を認めなかった。10月には、医療従事者や技術者などの一部の職業の女性、さらにはすべての女性に対して、兵役と旅行制限がより積極的に拡大される可能性がある。女性の強制的な軍登録に反対して一般市民が請願を行ったが、政府は教育を受けた専門職の女性を抑圧するこの政策を引き続き強化しようとしている。主婦は今のところ対象外だが、いずれ影響を受けることもあり得る。

現行法では国際人権基準に反して軍務に対する良心的兵役拒否が認められていないため、状況はとくに問題だ。平和主義者や福音主義のキリスト教徒を含む何人かの拒否者は、法廷で懲役と保護観察を言い渡された。軍事動員の忌避は3年から5年の懲役によって処罰される。アムネスティ・インターナショナルが良心の囚人と認定した友人のルスラン・カサブは、軍の動員のボイコットを呼びかけるビデオを流したため、524日の間投獄された後、釈放されたが、再び圧力を受け、数回暴行されたあげく、再審にかけられた。彼は依然この恥ずべき再審を受けている。私のもう一人の友人シャリアンカは、軍務への良心的兵役拒否と和平交渉を呼びかけるビデオを撮ったため、軍の脅迫にさらされた。エルヴィラという名の若い女子学生は、人生で初めてインスタグラムに反戦の投稿をしたため、誹謗中傷を受け、XX大学から追放された。

ロシアでは、勇気ある反戦活動家と良心的兵役拒否者が同様の攻撃と弾圧に直面している。軍は、戦争は絶対的なものであり、良心は好戦性に従属すべきだと考えている。正気の沙汰ではない。平和を準備するのではなく戦争を準備するために、外交の10倍の公的資金を軍に費やしている。その代償として私たちが流血を強いられたのも不思議ではない。私たちは、いわゆる「敵」との和平交渉は不可能とする軍事戦略を信頼することはできないし、信頼すべきではない。ウソに満ちた覇権的な西側帝国についてのロシアのおとぎ話や、狂った独裁者が世界を支配しているという西側のおとぎ話を聞いたなら、人びとの常識に反して戦争を繰り広げ、そのようなナンセンスの拡散をメディアに促す軍事化された普遍的な経済構造から誰が利益を得ているのかを尋ねてみてほしい。戦争をさらに推し進める物語と政策を押し戻すために、「敵」というイメージを解体し、平和教育を発展させ、あらゆる側のすべての交戦国による人権侵害の真実を広めるべきだ。十分な資金を備えた戦争挑発の主流に対して芸術的・哲学的・宗教的に応じることは多くの場合、批判的思考に慣れている人びとにとって十分に満足できるものではない。

非暴力的な生活様式への普遍的な移行は、科学的な平和主義、証拠に基づく意思決定および大衆のリテラシーと目覚めに基づくべきだと私は強く信じる。戦争を終わらせ、平和と社会的および環境的正義、人権の実現に向けた積極的な運動を含む平和の文化を発展させるために、非暴力的な解決策を模索し提唱する学術的基盤が必要だ。好戦勢力は現在、彼らの好戦性への構造的および状況的なインセンティブを持っている。これらのインセンティブは取り除くか、損失の恐れよりも利益への希望に訴える和平プロセスへの積極的なインセンティブに置き換えるべきだ。主権国家とその兵器産業、いわゆる暴力の独占による絶対的な領土支配をめぐり競合する軍隊など恐るべき形態の資本主義企業による武器と暴力の過剰生産の危機に対処するため、戦争経済は脅威や苦痛に対する寛容のレベルを高めてしまった。

私たちは、これが現在の世界経済の構造的な問題であり、ウクライナ戦争を含む世界における現在の数十の戦争をすべて止めるには構造的な変化が必要であることを理解している。国家の主な目的は暴力を生み出すことだという考えを見直す必要がある。私たちは非暴力の社会、戦争・軍隊・国境のないよりよい世界を構築する必要がある。そこではウクライナ人とロシア人双方が、共通の土地である母なる地球をよき領土として保全し分かち合うすべての人間の大家族の幸せな一員になる。キエフ、クリミア、ドネツク、ルハンシクは、人びとに優しい非暴力の調和によって支配される一つの惑星上で団結する。ロシアとウクライナ、東と西の間に非暴力の関係を構築する包括的ですべての人を受け入れる世界規模の和平プロセスが必要だ。軍事化された主権国家間、とくにいわゆる大国間の世界分割は、解決策でも勝利でも降伏でも体制変革でもない。大きな構造的変革が必要だ。私たちは、この惑星上のすべての生命を殺すことができる国家核備蓄の誇り高き所有者の暴力的な資本主義によって引き起こされる戦争の地球規模のエスカレーションを避けるために、あらゆる人びとに害や抑圧を与えることなく福祉の成長を促進する非暴力的な統治を必要としている。世界中の市民社会は、平和運動の発展と構造的な経済変革の提唱を通じて、戦争による不当な利益を抑制し、社会生活の平和的な組織化を推進すべきだ。

非暴力の生活をめざすよく知られた政治的技術はたくさんあり、私たちはそれらをどんどん考案することができるだろう。平和を支持する人びとの合理的な選択を妨げるものは何もなく、世界中の人びとが1980年代のように大きな声で共同してそのことを言うべきだ。80年代には何百万もの人びとが世界中で街頭に繰り出し、核戦争を防ぎ、それに代わって軍縮を前進させた。私たちがこの惑星に暮らす一つの市民として、一つの家族の地球規模の平和運動として行動したとき、人類が最も必要とする要求に従い、核備蓄の80%が廃棄された。ウクライナ戦争を止め、世界のすべての戦争を止め、平和を築くために、私たちは再びそのことを行えるだろうし、行う必要がある。多くの非暴力の活動が待ち受けている。希望と勇気を持って一緒に進めていこう。

−ここまで−

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(編集部 浅井健治)
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