2012年01月05日

ストレステスト意見聴取会を監視しよう

原子力安全・保安院が開いているストレステスト意見聴取会の記事を1214号に掲載しました。
http://www.mdsweb.jp/doc/1214/1214_67s.html

この記事は紙面の制約で短縮されています。短縮前の原稿は以下の通りです。「技術」と「価値判断」をめぐる論争などにも触れていますので、こちらもぜひお読みください。

なお、この日の議論全体の動画記録を以下のサイトで見ることができます。3時間以上ありますが、最初の3分の1がとくに重要な部分です。
http://vimeo.com/34137834

−ここから−

【ストレステスト意見聴取会/再稼働のアリバイ作りは許さない】
 原発再稼働の条件とされるストレステスト(耐性検査)について専門家の意見を聞く原子力安全・保安院主催の意見聴取会が12月22日、経済産業省内で開かれた。
 聴取会は11月14日に始まり、この日は第5回。委員11人のうち反原発の立場を明確にしているのは、井野博満・東大名誉教授(柏崎刈羽原発の閉鎖を訴える科学者・技術者の会代表)と後藤政志・芝浦工大非常勤講師(元東芝原子炉格納容器設計者)の2人だけだ。
 進行役の岡本孝司委員(東大工学研究科原子力専攻教授)が「原子炉の安全性の総合的評価を示すことがわれわれの使命」と切り出したのに対し、井野委員が問う。「福島の事故を津波の影響だけでなく地震の影響についてもきちんと検証することが前提ではないか。そのこと抜きにストレステストの意味はない。そんなことで運転再開に結びつけてはならない」
 推進派の委員は「福島の検証は時間とマンパワーがかかり、消化不良になる」。これに対して後藤委員は「多重防護が破られるおそれこそ重視すべきだ。原子力業界の中にいた人間が同じ考え方で調査して事故が防げるなんて誰も信じない」と福島事故の徹底検証と責任追及の重要性を強調。しかし、岡本委員は「地震についてはほぼ大丈夫だったとの報告がすでに出ている」、別の推進派委員も「意見聴取会が早期に結論を出すことが社会の要請」と審議を急ぐ。井野委員は「何が社会の要請なのか。原発を再開することか、原発をやめることか。明らかな社会の要請は、安全性を十分議論しろということ。時期を区切るべきではない」と反論した。
 岡本委員は「この会の役割は事業者が行なった評価の妥当性を技術的側面から判断すること」と繰り返す。井野委員は「技術とは何か。技術は社会の中に存在している。技術と価値判断を切り離し、技術の名で価値判断を封じることはやめよ」と批判。傍聴席から「その通り」「どこが総合的評価だ」「公正に議事進行しろ」のヤジが飛ぶ。「不規則発言はおやめください」と制止する岡本委員は、「不規則なのはあなただ」と切り返された。
 結局、議題として予定されていた2事業者のストレステスト報告のうち、関西電力大飯3・4号機に関する質疑が途中まで進んだだけで、北海道電力泊1号機については事業者の説明にさえ入れなかった。井野、後藤両委員の奮闘が聴取会の審議を大きく遅らせている。
 この日、保安院が資料として提出した井野委員の質問書には、白抜きされた個所があった。削除されたのは、聴取会に出席したJNES(原子力安全基盤機構、原発の検査を行なう独立行政法人)職員のうち三菱重工OBであることが知られている3人の名前と、聴取会委員の1人が三菱重工の関連企業から3千万円以上の研究費を受け取っていたとする報道。いずれも、原発を作った側が原発を検査する側に回り、安全審査の公正性・中立性など成り立たない事実を裏付ける情報だ。それを保安院は隠ぺいした。ストレステストの欺瞞性がここにも示されている。意見聴取会の傍聴体制を強め、井野・後藤両委員を激励し、再稼働のアリバイ作りをつぶそう。

−ここまで−

(浅井健治)
posted by weeklymds at 11:36| 報道/活動報告

2011年11月28日

ギリシャ:監査に立ち上がる市民たち

第1208号の主張「韓国『希望のバス』の勝利/『99%』が世界を変える」で、ギリシャの公的債務監査委員会の取り組みを短く紹介しました。
http://www.mdsweb.jp/doc/1208/1208_01a.html

監査に立ち上がった市民の動きを記録した映像を、NHKのBS世界のドキュメンタリーのサイトで無料で見ることができます。12月14日午前0時まで。
http://www.nhk.or.jp/wdoc/backnumber/detail/111107.html

以下、同サイトの解説です。

−ここから−

ギリシャ 財政破綻への処方箋〜監査に立ち上がる市民たち〜

ギリシャの債務問題が、欧州のみならず全世界に深刻な影響を与えるのではと懸念されている。IMFの主導による従来の解決策では立ち行かないと考える専門家や有識者のインタビューをもとに、ギリシャ経済再建への新たな処方箋を模索する動きを伝える。

番組は、ギリシャの債務増加の歴史をたどると共に、EU内でドイツのような勝ち組と、PIIGSと蔑まれる周辺国の競争力に大きな格差が生まれた理由を説明する。

また、アルゼンチンの前例から、IMFによる緊縮財政の推進は、銀行や大企業の借金を国民に付け替えるものだと指摘。一方、石油収入が債務返済に消えていたエクアドルは、IMFと決別。国の借金のうち国民の恩恵につながらず、役人や貸し手の利益に資しただけのものについて、返済停止を宣言したことによる成果を紹介する。

ギリシャでも、さまざまな社会団体、ジャーナリスト、知識人、芸術家など多方面から一般市民が集まり、不当債務をあぶりだすための監査委員会が発足。その活動を描く。

原題:Debtocracy
制作:BitsnBytes (ギリシャ 2011年)
公式サイト(英語):http://www.debtocracy.gr/indexen.html

−ここまで−

(浅井健治)
posted by weeklymds at 20:54| 報道/活動報告

2011年11月15日

区域外避難への賠償指針で前進

国が定めた避難区域外から避難した人々への賠償問題で、原子力損害賠償紛争審査会は11月10日、避難した人も避難せずに残った人も賠償対象とする方向で合意しました。実際に賠償が支払われたわけではなく、賠償の指針がそうなったというだけなので、決して手放しでは喜べませんが、「残った人も対象」とした点を含めて一歩前進であることは間違いでしょう。

この流れを作ったのは、前回10月20日の審査会で区域外避難者自らが訴えたことです。その様子については1205号の記事になっています。
http://www.mdsweb.jp/doc/1205/1205_45g.html

しかし、これは実は紙面の制約でだいぶ短縮したものです。短縮前の記事を以下に貼り付けました。福島市長までが「自主」避難への補償を求めていることなども分かると思います。

−ここから−

【「避難の権利認めよ」―区域外避難者が審査会で訴え】

 10月20日、文部科学省内で開かれた原子力損害賠償紛争審査会で、国が指定した避難区域外から避難した住民が「避難の権利を認めてほしい」と直接訴えた。区域外避難者(いわゆる「自主的」避難者)への賠償問題は当初、議題にさえ上っていなかったが、15回目の審査会で初めてヒアリングが実現。能見善久・審査会会長から、区域外避難も賠償の対象とする見解を引き出した。
 自主的避難はこの日の審査会の最後の議題。審査会委員に対する「説明者」として、瀬戸孝則・福島市長、いわき市の渡辺淑彦弁護士、子どもたちを放射能から守る福島ネットワークの中手聖一代表と宍戸隆子さんの4人が意見を述べた。

 瀬戸・福島市長は「福島市は低線量の被曝地帯。薄くても放射能は怖いものであり、避難したいという人をとどめることはできない。自主避難した人にも補償を。同時に、避難したくてもできず残っている家庭も区別しないでほしい」と要望した。経済の崩壊を避けるためとして除染を優先させている福島市だが、市民の避難の権利を否定することはできなかった。

 渡辺弁護士は、先だつ議題で賠償の状況について説明した東京電力幹部の姿勢に激しい怒りをぶつけた。「あの緊張感のなさは何だ。そもそもなぜ賠償請求書を被害者に書かせるのか。交通事故の示談でさえ加害者の側から示談案を持ってくることから始まる。ところが、東電は『書類を出さなきゃカネは出さない。書いてみろ』という態度だ。再考を求める」

 子ども福島の中手代表は、避難の時期によって賠償の線引きを図ろうとする動きを「避難の決断に影響を与えた出来事はずっとつながっている。境目はつけられない」と批判。「専門家でさえ正しい答えを出せないのに、親であるわれわれが答えを出さなくてはならなかった。安全側に立って判断しようと考えるのは当然ではないか。事故前からあった法令や基準、公衆の被曝限度や放射線管理区域の線量も、避難の合理性を示している」と指摘し、「避難する者、とどまる者―地域のきずなは引き裂かれた。せめて賠償だけでも、きずなを裂くのではなくもう一度結び合えるよう、可能な限り幅広くという考え方で議論を」と求めた。

 宍戸さんは札幌市に避難している。避難先の団地には160世帯、500人を超える区域外避難者が暮らす。「シングルマザーが多く、経済的に苦しい。北海道に避難したその日から就職を探していた人も。自主避難者はお金に余裕がある人、というのは違う。命を守る一点で避難を決めたんです」。宍戸さんは避難者の自治会を立ち上げた。「皆さん福島でとても傷ついて出てきたと知ったから」だ。コミュニティがばらばらにされた。避難を口にしただけで「何を考えている」「頭がおかしいんじゃないか」と言われた。実の親や夫も「国の言うことに逆らうのか」。「非国民」のレッテルまで貼られた。「それでも命を守りたかった。そこをくんでください」と訴える。
 区域外避難者への補償実現は金銭的次元にとどまらない意義を持つ。宍戸さんはそのことを強調した。「福島にいるお母さんたちと話すと、『国がうんとさえ言ってくれれば私も避難できるのに』『あと少し援助があれば私も飛び立てるのに』と言う。自主避難の補償それ自体が避難の権利を認めること。福島に残る人全員が避難を望んでいるとは思わない。でも、避難する権利、命を守りたいという権利は認めてほしい」
 住んでいたところは農業地帯。おいしいものを作ろうとみな頑張っていた。「北海道でいつもの半値というモモを見て悲しくなった。福島の生活は成り立たない。私は自主避難者の権利と合わせて福島県全体の補償を求める」。宍戸さんはそう締めくくった。

 4人の発言を聞いていた審査会委員からは避難の不可避性を否定する意見は出ず、能見会長は「よく噛みしめながら検討したい。自主的避難は賠償に値する一つの大きなグループ。残っている人たちの賠償の問題と同時に解決していきたい」とまとめた。

ーここまでー

(浅井健治)
posted by weeklymds at 18:54| 報道/活動報告